現在、世界のさまざまな業界、規模の企業がマルチクラウドの利用を進めています。本連載は、HashiCorpが実施した調査結果をまとめた「クラウド戦略実態レポート(State of Cloud Strategy Survey)」から、企業のクラウド活用状況や今後の利用方針、課題点、クラウドの成功に関連する主要なテクノロジーなど、さまざまな洞察を解説していきます。第6回は、クラウドシステムの運用で注目される自動化やサービスメッシュなどの状況を探ります。
膨らむサービスメッシュへの期待感
サービスメッシュとは、サイドカープロキシーを使って、サービス間の接続を安全に自動化するアーキテクチャーです。調査結果では、全体の68%がサービスメッシュの導入を検討しており、サービスメッシュに高い関心を持っていることが明らかになりました。
その一方で、実際に導入を完了した企業は、わずか10%にとどまっています。ただ、28%が「計画中」「ベンダー選定中」、30%が「試行中」「導入途中」の段階でした。「まだ計画していない」との回答は32%で、現状では比較的均等に分かれているという興味深い結果でした。
図:サービスメッシュの成熟度
サービスメッシュは、ホットなトピックですが、ほとんどの組織は、まだサービスメッシュの大規模な本番環境を運用する準備ができていないと思われます。ただし、1年後の想定状況を聞くと、49%が「導入完了または進行中」と回答し、26%は「計画段階」としました。それぞれの割合は増加傾向にあります。
多くの組織が既にサービスメッシュ導入の計画を立て、本格的な導入に向けて迅速に準備を進めることを想定しているようです。
サービスメッシュのユーザーと非ユーザーの意識の違い
自社のサービスメッシュ戦略が、「計画」「ベンダー選定」「トライアル」のいずれかの段階にあると考える回答者のうち、41%が最大の障害に「スタッフ・スキルの問題」および「手動プロセスが多過ぎること」を挙げました。52%は、何らかの商用ソリューションを購入するか、サービスとしてオープンソースソフトウェア(OSS)を実行する予定としています。
それでは、「サービスメッシュを使う予定はない」と回答している32%の非ユーザーは、どう考えているのでしょう。たとえサービスメッシュの機能が効果的であると理解していても、全ての環境に導入できるとは限りません。一方で、非ユーザーの47%は、サービスメッシュユーザーと同様にスキルや人員の不足、手動プロセスへの対処が、クラウド構想の妨げになっていると指摘しています。
図:サービスメッシュユーザーも非ユーザーも、スキル不足と手動プロセスに課題を感じている