文部科学省は3月29日、スーパーコンピューター「富岳」の共同開始1周年記念オンラインイベント「富岳百景」開催にあわせて記者説明会を開催した。同省は富岳の計算資源配分として、一般利用を40%程度、産業利用10%程度、内閣府の「Society 5.0」推進枠として5%程度、「『富岳』成果創出加速プログラム」に40%、調整高度化利用促進に10%を割り当てている。
文部科学省 研究振興局参事官(情報担当)付 計算科学技術推進室長 宅間裕子氏
成果創出加速プログラムは各分野の研究を富岳の力で推進させる取り組みで、「厳しい前提のもと、現在22の課題を選定している」(文部科学省 研究振興局参事官・情報担当付 計算科学技術推進室長 宅間裕子氏)。イベントでは各課題の概要や成果が披露された。
企業が研究に参加しやすく
富士通が主体となって開発し、理化学研究所の「京」の後継にあたる富岳だが、2020年4月には計算資源を新型コロナウイルス感染症研究用に緊急提供した。成果物である飛沫シミュレーションのアニメーション映像を目にした方も多いのではないだろうか。
当初予定を前倒しして2021年3月9日から供用を開始した富岳だが、同年の利用結果を見ると身近なところでは、巨大地震による相模トラフ沿いの被害予測高度化、線状降水帯や台風による豪雨防災の予測モデル開発などにも用いられている。さらに次世代人材育成の観点から、希望する学生向けの利用体験や利用枠を拡大する取り組みも行われていた。
成果創出加速プログラムは、各分野の技術的革新がデジタルトランスフォーメーション(DX)牽引に欠かせないとの観点から、ライフ、材料、防災・減災、ものづくり、宇宙・素粒子の6分野の課題に取り組む研究者が発表するイベントである。
文部科学省による概要説明を終えると、各分野から分野概要とセッションが説明された。
防災・減災分野は、東京大学 大気海洋研究所 佐藤正樹氏の「台風・線状降水帯の新時代の数値予測」、海洋研究開発機構 海域自身火山部門 地震津波予測研究開発センター 堀高峰氏の「地震を知って震災に備えるために『富岳』を活かす」の2セッションを取り上げた。早稲田大学 総合研究機構グローバル科学知融合研究所 研究院教授 高橋桂子氏は「災害など心配事が増えているが、学術的な先端要素を国の防災組織と連携しながら研究を進めている」と説明した。
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ライフ分野は、電気通信大学大学院 情報理工学研究所 情報・ネットワーク工学専攻 山﨑匡氏の「スパコン『富岳』で脳をつくる」、京都大学 医学研究科 腫瘍生物学講座/カロリンスカ研究所 分子血液学(客員) 小川誠司氏の「がんのはじまりを探る-クローン性造血と白血病」の2セッションを取り上げた。小川氏は東京医科歯科大学 特任教授/M&Dデータ科学センター センター長 宮野悟氏の共同研究者である。