ネットアップ 代表執行役社長 中島シハブ・ドゥグラ氏
ネットアップは7月21日、クラウド事業の戦略について報道機関向けに説明会を開催した。
代表執行役社長の中島シハブ・ドゥグラ氏はまず、同社が実施したユーザー調査の結果を紹介した。今後のIT投資分野として「セキュリティの強化」が首位で、次いで「クラウドの最適化」が挙がっているとした。
中島氏は「ユーザー企業にとってクラウドは導入段階からビジネスで活用する前提になっている」と分析し、同社は「ビジネス成長に貢献するセキュアでフレキシブルなハイブリッドマルチクラウド環境の構築をトータルに支援できる唯一のベンダー」であると主張。その上で、「シンプル」「セキュア」「フレキシブル」の3つのキーワードで新しいクラウドの課題を解決していくとした。
ネットアップ チーフテクノロジーエヴァンジェリスト 神原豊彦氏
続いて、チーフテクノロジーエヴァンジェリストの神原豊彦氏が、同社製品とサービスの最新動向を説明した。クラウド関連の製品とサービスについて、先述した「シンプル」「セキュア」「フレキシブル」の注力分野に沿って紹介した。
「シンプル」では「Cloud Manager」による一元管理機能の向上やサブスクリプションサービス「NetApp Keystone」での「オンプレミスとパブリッククラウドの間でサブスクリプション ライセンスを統一」「単一契約の元で、お客さまのオンプレミスとクラウドのバランスに応じた契約容量の動的な移動を可能に」といった取り組みが、「セキュア」ではランサムウェア対策としてサイバーレジリエンス機能が強化されたこと、「フレキシブル」ではVMwareとの協業の強化によって同社のストレージサービスが「VMware Cloud Service」の外部データストアとして認定されたことなどが挙げられた。
なお、最近注目を集める「サイバーレジリエンス」に関して、同社では「データ保護とデータセキュリティの融合」と定義しているといい、ランサムウェア対策として提供していく計画だが、実態としては「ONTAP 9.11.1」「Cloud Manager」「Cloud Backup」「Cloud Data Sense」「Cloud Insights」「Professional Services」といったさまざまな製品/サービスにおける機能強化/アップデートの結果として実現される形になるという。
また、フレキシブルに関する取り組みとして紹介されたVMwareとの連携強化の成果として、パブリッククラウド上で提供されるVMwareのクラウド環境(VMware Cloud on AWS、Azure VMware Solutions、Google Cloud VMware Engine)のデータストアとして、標準で提供されるvSAN環境の代わりにNetAppデータストア環境を利用することが可能になるというものだ。VMwareがこうした形で外部データストアを認定し、サポートするのはこれが初めてだという。
同社は、vSANの代わりにNetAppデータストアを採用することのメリットとして「データ容量が大きくI/O負荷が高いワークロードにおいてコストを35~45%削減可能」「クラウド運用の高速化(移行、プロビジョニング、スケール、リサイズ、リフレッシュ、クローン)」「Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloudで共通に利用できる統一されたデータ管理」などの点を挙げている。
ネットアップ 常務執行役員 CTO 近藤正孝氏
最後に、常務執行役員 CTOの近藤正孝氏が、同社の30年の歩みと今後の方向性について紹介した。同社は2022年で創業30周年を迎える。1992年の創業時の画期的なアイデアとなった「WAFL」というファイルシステムがONTAPの中核技術であり、30年間にわたって同社が進化させ続けてきたものだという。
一方でクラウド対応も2014年から始まっており、近藤氏は、ネットアップが「クラウドへの進化の重要性を最初に理解したストレージベンダー」だとした。元々は同社のストレージアプライアンスのためのストレージOSという位置付けだったONTAPは、現在ではパブリッククラウドなどでも稼働するデータプラットフォームとなっている。
こうした経緯を踏まえ、また同社の「知的資産(IP)のほぼ全てがソフトウェアである」ことからも、今後の方向性は「オンプレミス用ストレージカンパニーからクラウド主導のデータ中心ソフトウェアカンパニーへ」というものになるという。もちろん一方でストレージハードウェアについても継続的に進化させていき、販売していくことも同氏は強調したが、同社の強みがソフトウェアにあることは間違いない。