本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、ネットアップ代表執行役員社長の中島シハブ・ドゥグラ氏と、AWSジャパン技術統括本部レディネス&テックソリューション本部 本部長/プリンシパルソリューションアーキテクトの瀧澤与一氏の発言を紹介する。
「ハイブリッドクラウド時代の主要5企業の1社として使命を果たしていきたい」
(ネットアップ代表執行役員社長の中島シハブ・ドゥグラ氏)
ネットアップ代表執行役員社長の中島シハブ・ドゥグラ氏
ネットアップは先頃、2021年度(2021年4月期)の事業戦略についてオンライン形式で記者説明会を開いた。中島氏の冒頭の発言はその会見で、自らのIT分野でのポジショニングを「ハイブリッドクラウド時代の主要5企業の1社」と表現して存在感を示したものである。ちなみに、使命は「ストレージのリーディングカンパニーとして、顧客のデータ管理・活用に向けた戦略を支援していくこと」だという。
会見で説明があった事業戦略の概要は関連記事をご覧いただくとして、ここでは中島氏の冒頭の発言や、同社の社長に就任して8カ月が経った今の段階での思いに注目してみたい。
まずは冒頭の発言について。「ハイブリッドクラウド」には「マルチクラウド」の意味合いも含まれていることをご承知おきいただいた上で、図にあるのが「ハイブリッドクラウド時代の主要5企業」である。クラウドサービスからは、Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud、Microsoft Azureの3つが挙げられ、これにコンピュート領域においてサーバ仮想化環境を提供するVMware、そして共有データストレージプラットフォームのNetAppという顔ぶれだ。
ハイブリッドクラウド時代におけるNetAppのポジショニング(出典:ネットアップの資料)
図にも記されているように、NetAppはVMwareとともにクラウドサービスを横断する存在としても位置付けられている。NetAppにとっては自らの存在感が引き立つ捉え方だといえよう。
このように自らをうまく表現する中島氏は、2019年12月1日にNetAppの日本法人であるネットアップの社長に就任した。それ以前はシスコシステムズに19年間在籍し、各事業領域で要職を歴任した上で、直近はサービス営業を統括する専務執行役員を務めた。筆者もかつてシスコの会見で幾度かお会いしていることから、「シスコ幹部」のイメージが強いが、ご本人にすれば今回の転身は大きなチャレンジだろう。
そんな中島氏に、会見の質疑応答で「社長就任から8カ月が経ったところで、ネットアップの最大の強みは何だと見ているか」と聞いてみた。すると同氏は次のように答えた。
「社長に就任してほどなく新型コロナウイルスの感染が広がり、私たちはお客さまやパートナー企業へのサービス提供に影響を与えないようにすることが最優先事項になった。それに対し、社員全員がこれまで本当に尽力してくれている。当社の強みはまさにその社員全員のパワーだと確信している」
強みというより、社長としての手応えだが、こんなコメントを聞いた社員は一層モチベーションが上がるだろう。今後、ネットアップの存在感をさらに高めていけるか、経営手腕に注目していきたい。