サステナビリティや経済安保リスクが迫る日本企業のグループガバナンス再構築

阿久津良和

2022-10-05 08:00

 KPMGコンサルティングは10月4日、日本企業が抱えるグローバル経営管理の課題をテーマにした勉強会を開催した。地政学・経済安全保障リスクやサステナビリティ(持続可能性)、新型コロナウイルスの流行で日本企業を取り巻く環境は「グレートリセットされた。日本企業がグローバル経営に取り組むには、グループガバナンスを再構築しなければならない」(同社 サステナビリティトランスフォーメーションサービス パートナー 足立桂輔氏)と鼓舞した。

判断の遅れなのに「ビジネス優先」と批判

 企業の経営層に求められるのは、地政学リスクが顕在化した時の対応である。ロシアによるウクライナ侵攻を例に挙げるまでもなく、各企業は紛争地で事業を継続するのか、縮小・停止するのか、撤退するのか行動を起こさなければならない。

KPMGコンサルティング サステナビリティトランスフォーメーションサービス パートナー 足立桂輔氏
KPMGコンサルティング サステナビリティトランスフォーメーションサービス パートナー 足立桂輔氏

 「最終的には企業経営者、経営層の判断。信念が問われる。ただ、必ずしも正解がない。自社が社会に対して貢献したいのか判断するのが大事なポイント。(新疆ウイグル自治区からの撤退が遅れた)某社は、遅れた故に『ビジネスを優先している』とあらぬ批判にさらされた」(足立氏)

 株主などステークホルダーの声を聞いて判断を下すのが重要だと、足立氏は説明した。

 また、日本企業は「(一度海外に出ると)地元に根ざす努力をする。ある意味で美徳だが、撤退時の冷静な判断ポイントにたどり着かない。出口戦略の準備も重要」だとも足立氏は助言している。紛争発生はサプライチェーンの混乱を招くが、「グローバル全体のサプライチェーンを見て最適解に導く」(足立氏)役割が欠かせないという。

 足立氏は「判断できるのは社長だけ。これが日本企業の実情」と現状をつまびらかにしながら、「(企業は)サプライチェーンオフィサーや普段から経営者にインテリジェンスを上げる経済安全保障・地政学リスク統括部門を用意するのが有用だ」と提言した。

 だが、日本企業の「発想は日本中心。日本から海外の工場をコントロールする『冊封(さくほう)体制』だ。日本人を現地に派遣するのも『代官的』。(海外子会社の)経営の自主性も日本特有である」(足立氏)。さらに足立氏は「親会社を中心に海外で手足を伸ばしていたのが(旧来の)グループの姿」と指摘しながら、グループガバナンスの変化に後塵を拝していると注意喚起する。

 KPMGコンサルティングは「日本を一地域/機能に」「リモートモニタリング指向(データ+ハイブリッドワーク)」「自律分散型・個人の集合」「統合・標準重視」「シナリオ分析とトップダウン」と五つのキーワード披露した。

 ガバナンスも重要だが、企業は目の前のビジネスを継続しなければならない。足立氏は「ビジネスモデルの変革は多種多様だが、一番多いのはサプライチェーンのミニマム化。なるべく地産地消の形に変えながら」、サーキュラーエコノミー(循環型社会)に即したビジネスモデルへの転換を推奨した。

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