不確実性の時代に、アジャイル開発で向き合っていこう

第1回:アジャイル開発への移行の必要性と普及のための条件 - (page 2)

岡本修治 (KPMGコンサルティング)

2023-01-17 07:30

 3つ目は、アジャイル開発をどのようにエンタープライズ規模にスケールアップするかという点です。

 アジャイル(スクラム)は、もともと比較的小規模な開発のために考案された開発手法です。すなわち、スクラムは開発のサイクルを1チーム(5~9人程度)でどのように回すのかという点で示唆に富むものの、複数チームで開発を行う場合の回し方については触れられていません。

 さらには、「開発で実現する要件(ユーザーストーリー)をどのように洗い出すのか」「ソリューション全体のアーキテクチャーをどのように構想するのか」、といった開発の前段の活動、あるいは反復(スプリント)を通じて作成したソリューションを継続的にデリバリーしていくために必要な、作成したコードを効率的に統合・ビルドし、テストのためにデプロイする仕組みの構築や、リリース前に必要な作業をどのように実施すべきか、といった後段の活動についての言及がありません。

 スクラムで言及されていない部分を補い、アジャイル開発をエンタープライズ規模にスケールアップする方法として、ディシプリンドアジャイル(DA)やScaled Agile Framework(SAFe)といったフレームワークが考案され、浸透しつつあります。これらフレームワークの概要と利点を紹介します。

 本連載では、前述の3つのポイントについて解説する予定です(内容については多少変更する場合があります)。

主な内容
1. アジャイル開発手法の生い立ちと基本原則の理解
#1
(今回)

(はじめに)
開発をとりまく現在の環境、アジャイル開発への取り組みの必要性:
本当の意味でアジャイル開発が浸透する上で必要な条件は何か?

#2

20世紀のソフトウェア開発手法であるウォーターフォール誕生から、不確実性の時代である21世紀の到来―早く安く失敗し、そこから学ぶ

  • ウォーターフォールの生みの親の懸念の的中とそれが遺した教訓、アンチテーゼとしての反復型開発とアジャイルマニフェストの意味するところ
#3

アジャイル開発の基本原則おさらい – なぜ成果が出るのか?出しやすいのか?

  • 米IT企業がアジャイル開発で目を見張る成果を出し始めた。そのポイントは「どうやるか?」よりも「なぜそうやるのか?」を考えること
2. マインドセットの転換
#4

アジャイルに対する誤解(1) – 設計せずに、いきなり作る?文書を書かない?

  • アジャイルでも最初の設計は重要だが、程度が大切。最適な設計は、反復を通じ軌道修正することで見つけることができる。
  • アジャイルでも必要な文書は書く。ただし、書くタイミングとボリューム(内容)は吟味する必要がある。
#5

アジャイルに対する誤解(2) – ウォーターフォールと比べて品質はどうなの?

  • それ自体では動かない設計書をレビューするのと、反復ごとに動くソフトウェアを組み上げていくのと、どちらがより品質に貢献するだろうか?
#6

自己規律、自己組織化 – アジャイルとともに成長していくチームと開発者たち

  • アジャイリストは、反復ごとに実施する「ふりかえり」を通じて自律的に成長し、次にやるべきことを的確に理解、実践していく
#7

「アイデンティティ」ではなく、「タスク」としてのリーダーシップ:何がモチベーションか?

  • あるテーマについて上司よりも詳しければあなたは知的労働者であり、知的労働を行うチームにふさわしい、これまでとは違うかたちのリーダーシップがある
3. スケールアップと今後の展望
#8

デザイン思考、DevSecOps – 単なる開発を超えて

  • 開発をアジャイルでうまく回せるようになると、開発活動と連動する他の領域における改善ポイントが明らかになってくる
#9

アジャイルの課題-どうスケールアップ(大規模に対応)するか?

  • もともとアジャイルは小規模向けの開発手法だが、大規模に対応すべく、DAやSAFeなどのフレームワークが浸透しつつある
#10

まとめと今後の展望

  • アジャイルの向き・不向きを押さえ、発注者、開発者、利害関係者の「三方良し」の関係を実現、維持、発展させていく

 次回は、ウォーターフォール開発手法と、それに対するアンチテーゼとしての反復型開発、その発展形としてのアジャイルの生い立ちを見ていきます。ウォーターフォールの考案者はその手法がソフトウェア開発にうまく適合するか懸念を持っていたのですが、それを裏付けるように、反復型開発はなんとその実の息子によって考案されたという話とともに、アジャイルマニフェストの意味するところについて解説します。

岡本 修治(おかもと・しゅうじ)
KPMGコンサルティング Technology Strategy & Architecture シニアマネジャー
外資系総合ITベンダーにおいて大規模SI開発をはじめ、ソフトウェア開発プロセス/ツール展開のグローバルチーム、コンサルティング部門などを経て現職。金融、製造、情報通信など業界を問わずITソリューション選定、開発プロセスのアセスメント(評価)と改善、BPR支援などさまざまな経験を有し、中でも不確実性の時代と親和性が高いアジャイルトランスフォーメーションを通じた意識改革、開発組織の能力向上支援をライフワークとし注力している。

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