情報処理推進機構(IPA)は1月25日、「情報セキュリティ10大脅威 2023」を発表した。トップは前年と同じく、個人が「フィッシングによる個人情報などの詐取」、法人が「ランサムウェアによる被害」だった。
情報セキュリティ10大脅威は、前年に発生した情報セキュリティ事故や攻撃の状況などから脅威を選出。情報セキュリティ分野の研究者や企業の実務担当者など約200人が参加する「10大脅威選考会」の投票により、「個人」「組織」それぞれの立場で上位10種類を決定している。2023年版は、個人、組織とも9位まで前年と同じだった。10位には、個人で「ワンクリック請求などの不当請求による金銭被害」、法人で「犯罪のビジネス化(アンダーグラウンドサービス)」が新たにランクインした。
IPAが発表した「情報セキュリティ10大脅威 2023」
フィッシングは2年連続で個人トップとなり、フィッシング対策協議会への報告件数が2021年の約53万件から2022年は約97万件に急増するなど一層の注意が必要だとする。フィッシングで盗まれた個人情報は、さらなるサイバー犯罪などに悪用されるため、IPAは、「詐取された認証情報による不正ログインを予防するために多要素認証を有効にする」「被害を早期に発見するために利用サービスのログイン履歴やクレジットカードなどの利用明細を日常的に確認する」などの取り組みが大切だと解説する。
組織での「ランサムウェアによる被害」は、3年連続トップだった。脆弱性の悪用やリモートデスクトップ経由の不正アクセスによる事例が続き、暗号化だけでなく窃取した情報の暴露、サービス妨害攻撃の実行、被害者の関係者への脅迫など、攻撃者が手口を幾つも使う多重脅迫が増えている。「ランサムウェアの感染経路は多岐にわたり、マルウェア対策、不正アクセス対策、脆弱性対策などの基本的な対策を確実かつ多層的に適用し、バックアップ取得や復旧計画の策定など攻撃を想定した事前の準備が重要」(IPA)とする。
IPAは、2023年から多岐にわたる脅威に共通する対策をまとめて具体的に解説する「共通対策」を新たに作成する予定。パスワードの適切な運用やインシデント対応など7項目に分類して記載し、2月下旬にウェブサイトで公開することにしている。