トップインタビュー

重要なのは顧客が求める成果--ブラックラインCROと日本法人トップが語る戦略

河部恭紀 (編集部)

2023-07-10 07:30

 クラウド型決算プラットフォームを提供するBlackLineの最高レベニュー責任者(CRO)であるMark Woodhams氏が来日した。日本法人であるブラックラインで代表取締役社長を務める宮﨑盛光氏を交え、同社の戦略などについて話を聞いた。

 Woodhams氏は、CROとして、同社にもたらされる収益に対して1ドル単位で責任を負っており、今回の来日は、日本法人の士気を上げるとともに、顧客やパートナーと話すことが目的だという。

 BlackLineは3月、成長戦略推進に向けて経営陣の交代を発表し、創業者のTherese Tucker氏がOwen Ryan氏との共同最高経営責任者(CEO)という形でCEO職に復帰している。顧客中心であり製品に情熱を注ぐTucker氏と、パートナーに深い理解を持つRyan氏という組み合わせが、同社を次のレベルに引き上げるだろうとWoodhams氏は説明する。

Mark Woodhams氏
Mark Woodhams氏

 BlackLineは、2001年に米国で創設され、現在、収益の7割強が北米からもたらされている。そのため、さらなる成長に向けては、グローバルでの成長を加速することが不可欠とWoodhams氏は考える。

 日本は、2023年上半期に41%と高い成長を遂げている。その理由について、Woodhams氏はタイミングがあると述べ、財務のデジタル変革に乗り出す準備ができた企業が現れ始めていることを挙げる。

 ブラックラインは、日本において小売、金融、製造といったさまざまな業界の顧客を持つ。その1社である、武田薬品工業では、「BlackLine」導入により照合作業を自動化して6万人時を削減したという。世界中にある企業の経理財務部門が処理能力に注目しているとWoodhams氏。

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 経理財務では多くの作業が依然として手作業で、ほとんどが自動化できるという。間違いが起こりやすい「Excel」入力や手作業をなくすことで、経理財務部門を効率化できる。日本企業もそのような自動化や効率化に目を向け始めているという。

宮﨑盛光氏
宮﨑盛光氏

 BlackLineの導入により決算業務のデジタル化が実現することで、経理財務部門は戦略の立案・実行支援といったことを実行する“ビジネスパートナー”のような役割を担うことが可能になる。「多くの経理財務の責任者が長年取り組んできたことだが、実現する方法がなかった」と宮﨑氏は述べる。

 日本に進出して5年だが、開拓の余地はまだあるとWoodhams氏。北米のFortune 50企業の上位10社のうち8社が同社顧客である一方で、小規模企業にも製品の導入が進んでいる。日本では現在、3000〜4000社ある上場企業および上場していないが大きな規模を持つ企業をターゲットとしている。近い将来、北米にならって対象とする企業規模を広げ、中堅企業を狙うことも考えているという。

 今後の戦略としては、グローバルでは、決算領域のリーダーであり続けるため、顧客に最大限の価値を届けられるようプロダクトを充実するとWoodhams氏は語る。BlackLineは、顧客中心の企業であり、カスタマーサクセスが重要と考えているという。そのため、顧客に製品を最大限活用してもらうことが戦略だと続ける。

 日本では、BlackLineが決算領域のリーダーであるという認知度をより向上させることに注力したいと宮﨑氏。20年の歴史がある北米と比べて認知度に差があるが、「一度知ってもらえれば、良いものだと分かってもらえる自信がある」とする。

 加えて、カスタマーサクセスが日本でも大事な戦略だという。「成功している顧客は、成功体験を他の顧客に伝える。これが良い連鎖を生んでマーケットにも広がる」(宮﨑氏)。そのため、ビジネスを伸ばすために顧客を獲得するというよりも、顧客の成功を求めていくと自然と成長していくという順序で考えているという。

 そのためには、顧客のゴールをよく理解し、それに向けた製品を提供することが大事だとWoodhams氏は語り、「顧客が求める成果が最も重要」とする。製品としては「経理財務部門のために本当に盤石なプラットフォームを提供できるかを模索し続けている」と同氏は述べ、「SAP」「Oracle」「Infor」といったERPとの統合や、手作業によるタスクの自動化といったことに加え、財務報告に関するインサイトの提供ということでAIの役割にも注目していると続ける。

 宮﨑氏は、カスタマーサクセスに向けた施策としてユーザーグループ「ブラックラインジャパン ユーザーグループ(BJUG)」を立ち上げていることに触れ、現在、メンバーが350人を超えているとした。ユーザー同士で事例などについて話し合い、そこで出てくる意見やリクエストが製品開発の大事な源泉になっているという。

 パートナー企業とも緊密に協力し合っており、製品の方向性についてもフィードバックを生かしているという。日本では現在、セゾン情報システムズなど6社がパートナーとなっているが、今後は拡充する方向だという。「エコシステムの拡大こそが、顧客の声を集めることにもなり、われわれのビジネス拡大にもつながる」と宮﨑氏は強調した。

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