人工知能(AI)に関するハイプや希望、不安が渦巻く中、テクノロジー分野におけるもう1つの潮流が静かに生まれ、莫大な投資に向けた流れに発展しようとしている。
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その潮流は、センサーやトラッカー、製造設備、アプライアンス、ウェアラブル製品、自動車、建物などに及んでおり、衰えを見せる気配がない。その潮流とはエッジであり、AIが大々的に普及する前にわれわれの仕事や業務を形作り、そして変革していくだろう。ZDNETが紹介してきたデバイスや製品の多くを見ても、エッジの波が押し寄せてきていることが分かる。
エッジとIoTはビッグビジネスだ。オープンソースグループのEclipse Foundationが実施した調査によると、IoTとエッジに対する投資額が2022年に10万〜100万ドル(約1400万〜1億4200万円)だったとする回答者は23%、2023年に同等の額を投資する見込みの回答者は33%だったという。そして回答者の10人に1人は2023年に1000万ドル(約14億2000万円)以上を投資するという。また、企業の半数超(53%)は現時点でIoTソリューションを導入しており、24%は向こう12〜24カ月で同ソリューションを導入しようとしている。
エッジプロジェクトを支えているのはハイブリッドクラウドだ。回答者の42%は、エッジ導入がハイブリッドクラウドによって可能になったと示唆している。クラウドベンダー各社、特にAmazon Web Services(AWS)は、一見すると真逆のテクノロジーのようなエッジとクラウドが交差する領域を見失ってはいない。
AWSのIoT担当バイスプレジデントであるYasser Alsaied氏は米ZDNETとのディスカッションの場で「多くのユースケースと顧客要求が新たに持ち上がってくる中、クラウドを足場にしてエッジコンピューティング環境を実現するというニーズが高まっている」と述べ、「ユーザーの近くにアプリケーションを配したいと考える企業にとってエッジインフラは重要となっている」と続けた。
Alsaied氏によると、こういったユースケースには、ローカル環境でデータ処理が必要となるリアルタイムアプリケーションや、ローレイテンシーアプリケーション、データレジデンシーに対する要求が含まれているという。同氏は、「船舶上でワークロードを運用しており、コネクティビティー面での制約により、クラウドにデータをアップロードできない企業」にとってエッジアプリケーションが有効となると述べた。こうした能力は規制の厳しい業界、例えば政府機関やヘルスケア、金融サービスといった「規制に準拠するために地理的境界内で機密データを保存し、処理しなければならない業界」にとっても必要だ。