AmazonといえばEコマースプラットフォームのイメージが強い。ありとあらゆるものを売り、それを素早く玄関先まで届ける同社は、Eコマース業界の巨人だと言っていい。
提供:Sabrina Ortiz/ZDNET
しかし現在の同社は、クラウドコンピューティング業界でも強烈な存在感を示す企業であり、今や生成AIへの関与も強めようとしている。
米国時間7月25日、AmazonはニューヨークでAWS Summitを開催した。このイベントは、同社のクラウドサービスに関する展示や、講習セッション、基調講演を中心とするものだ。
Amazonは今回、この機会を利用して、開発者向けの人工知能(AI)プラットフォーム構築を最適化するサービスや、大企業のAI統合を支援するサービスなど、生成AIに関する大きな発表をいくつも行った。
AIのモデルを構築して運用するためには、モデルの実行に使われる実際のチップや、モデルの構築やトレーニング、現実の問題へのモデルの適用など、いくつものコンポーネントが必要だ。
AWSが今回発表したさまざまな内容は、それらのステップを最適化するためのものだ。この記事では、いくつかの注目すべき発表内容を簡単に紹介していく。
AWS HealthScribe
「AWS HealthScribe」は、米国の医療情報のプライバシーとセキュリティを保護する法律であるHIPAAに対応した、生成AIで臨床医と患者の会話を書き起こし、臨床文書を作成するサービスだ。
生成された臨床文書には、患者と医師の会話内容の要約、AIが生成した分析情報、その元になった会話記録に対する参照情報、構造化された医学用語に関する情報が含まれている。
提供:AWS
このサービスが目指しているのは、臨床医が詳細な文書を作成するのに費やす時間を削減し、その時間を患者を対面で診察するなどのもっと重要なことに使えるようにすることだ。
同社はプレスリリースで、「医療ソフトウェアプロバイダーは、単一のAPIを用いて、確固たる診療記録を作成し、重要な詳細情報(医学用語や医薬品など)を抜き出して、問診での会話から要約を作成する作業を自動で行い、それらを電子医療記録(EHR)システムに入力できます」と述べている。
このモデルは、プライバシーに関する懸念に対応するため、始めからデータセキュリティとプライバシーに配慮して構築されており、処理したあとの顧客データは一切保持せず、転送中の顧客データも暗号化されるようになっている。
Googleが5月に「Med-PaLM 2」を発表していることからも分かるように、医療分野で生成AIが使用されるのはこれが初めてではない。
無料・低料金のAWS生成AIコース
2022年11月に「ChatGPT」がリリースされて以来、生成AIの人気はうなぎ上りだ。この技術には、業界全体のワークフローや生産性を改善できる可能性があり、企業は、生成AIを扱えるスキルを持つ人材を強く求めるようになった。
ところが、生成AIには多大なメリットや人気があるにもかかわらず、多くの人は、自分がAIを正しく使うための適切な知識を持っていないと感じている。
AWSは、さまざまなスキルや経験を持つ人々を対象とした、生成AIに関する7つのコースを新たに発表した。これらのコースは、いずれも生成AIの異なる側面を扱っており、「Amazon CodeWhisperer」を使って何かを構築する方法を学ぶような複雑な話題を扱うものもあれば、ビジネスにAIを使用する方法について学ぶような大局的なトピックもある。
コースの詳細はこちらに掲載されている。