日立製作所は9月4日、製造業のデジタル変革(DX)を一括支援するサービス群/クラウド基盤を「製造業向けDXクラウドソリューション」として新たに体系化したと発表。同月から提供を始めている。同社が製造業の領域で蓄積してきた知見・ノウハウ、デジタル技術を生かした多種多様なサービスを、従量課金型プライベートクラウドサービス「ComiComiCloud」を基盤に提供するものになる。
昨今、労働人口の減少、環境に配慮した事業推進、不確実性の高まりなど、製造業を取り巻く課題は複雑かつ複合的になるとともに、急速に変化している。それに対応するため、人工知能(AI)やデータ処理技術などのデジタル技術によるDX推進が急務となっている。また、製造業のDXでは、エンジニアリングチェーンやサプライチェーンの個別最適で進められてきた業務をデータで可視化・分析することで、エンジニアリングチェーンの全体最適化やサプライチェーンの計画立案・生産計画の最適化/迅速化、コーポ―レート部門の業務標準化/問題解決力の強化、事業部門の競争力強化につながるとしている。
サービスラインアップは、(1)エンジニアリングチェーンのためのDX推進支援サービス、(2)サプライチェーンのためのDX推進支援サービス、(3)部門横断業務のためのDX推進支援サービス、(4)ComiComiCloud――の4つになる。それぞれにおいて具体的に、下記のサービス内容をラインアップしている。
製造業向けDXクラウドソリューションの体系図(出典:日立製作所)
エンジニアリングチェーンのためのDX推進支援サービス
エンジニアリングチェーン管理(ECM)とサプライチェーン管理(SCM)をシームレスに連携させ、製造現場の品質情報とメンテナンス情報を設計に反映させるプロセスを確立させる。これにより、設計段階での不良を抑止し、製品の品質や作業効率を向上させる。
- 3D CAD上であらかじめ登録しておいた設計ルールに違反していないかをチェックし、チェックの工数削減や漏れ防止、手戻り・設計不良・設計変更の低減を実現(気付き支援CADシステム)
- 業務手順を階層化し、ノウハウや過去データを関連付けて表示することで、“資料を探す”、“誰かに聞く・確認する”といった時間を削減するとともに、作業品質を平準化(業務ナビゲーションシステム)
- 設計・製造からの不良や問題点などの品質情報をデータベースに格納し、それをAIが解析・学習することでキーワードや情報の関連性が不明な場合でも、解決のための関連情報を検知・把握(文書活用促進ソリューション)
- 標準化された業務手順を遂行することで、製造からフィードバックされた品質情報を参考にしながら、標準化されたプロセスに従い効率的に設計を進めることが可能(業務ナビゲーションシステム+文書活用促進ソリューション)
- セキュリティの確保されたクラウド環境上の仮想デスクトップを活用して、場所や端末に依存せず安全な作業環境を実現(3次元仮想デスクトップ)
- 3D CADデータから3Dの組み立て手順書を自動生成。熟練者と若手の技能差の縮小と、手順書作成における生産性を向上(組立ナビゲーションシステム)
- プロジェクト関係者間で開発工程の計画・進ちょく、作業負荷状況を可視化し、円滑なプロジェクト推進およびプロジェクトの先手管理を実現(開発日程管理サービス)
サプライチェーンのためのDX推進支援サービス
SCMの起点となる計画策定にAIや高速資材所要量計画(MRP)エンジンを活用することで、複雑な制約条件や重要業績指標(KPI)を考慮した最適な計画の立案や迅速な生産計画の立案に貢献し、計画系業務変革を実現する。
- 計画業務における制約条件やKPIをAIにセットアップした上で、供給計画や商品情報など、計画に必要なデータを入力することで、膨大な組み合わせの中から素早く最適な計画を自動で立案(計画系業務最適化サービス)
- 日立が独自開発した高速MRPエンジンを活用し、迅速な生産計画の立案と変更を支援。計算が速いだけでなく、飛び込みの受注や急な欠品などのさまざまな計画変更要因に対して影響範囲を高速に分析し、再計算範囲を限定できるため、問題点の解消に向けた反復計算にも容易に対応(サプライチェーンプランニングサービス「SCPLAN」)
部門横断業務のためのDX推進支援サービス
コーポレート部門と事業部門の業務標準化とAIによる問題解決力の強化により、全社一体となるワークスタイル変革を実現する。
- さまざまな業務を実施する中で、決められた手順でノウハウを共有しながら業務負荷を軽減。作業者に依存せず、作業品質の平準化を実現(業務ナビゲーションシステム)
- 業務の途中で疑問が生じた場合、実行している業務名やキーワードを検索することで、関連性の高い過去の業務データや事例をAIが“観点マップ”として可視化し、慣れた作業者でなくては思いつかないような情報を提示。蓄積された情報を有効に利用/活用し、業務の効率化と品質の向上に貢献(文書活用促進ソリューション)
ComiComiCloud
企業の指定場所に同社資産のハードウェアを設置し、ソリューションのサービス提供基盤となる占有のプライベートクラウド環境を構築。日立が運用・保守を実施する。安定した性能と堅牢なセキュリティを確保し、重要なデータを扱う環境として適しているとのこと。また、基本料金が不要な従量課金制の料金体系で、ITコストの最適化や運用コストの低減にも有効という。