日立ソリューションズは8月30日、製造業の脱炭素に向けてサプライチェーン(供給網)の二酸化炭素(CO2)排出量の把握や予測、サプライヤーの評価など5つの製品とサービスでトータルに支援する「サプライチェーン脱炭素支援ソリューション」を発表した。
そのうち、人工知能(AI)を活用したライフサイクルアセスメント(LCA)基盤「Makersite」、サプライヤー(供給業者)のサステナビリティー(持続可能性)を評価・管理する「EcoVadis」、製品当たりCO2排出量の計算支援コンサルテーションと表計算テンプレートを組み合わせた「カーボンフットプリント算定支援」、企業内で脱炭素やDX(デジタルトランスフォーメーション)実現に向けた情報提示や価値創造を行うワークショップを提供する「SX/DX未来創造型ワークショップ」は新たに追加されたものになる。
サステナビリティートランスフォーメーション(SX)に注目が集まる中、経営戦略統括本部 経営企画本部 担当本部長の野田勝義氏は「脱炭素などを意識したスマートマニュファクチャリングが(企業に)求められているが、この流れを推進するため、サプライチェーン脱炭素支援ソリューションを提供する」と取り組みを説明した。
CO2を含む温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させるカーボンニュートラルは日本政府も取り組み、企業へも対応が求められている。2013年以降は減少傾向にあったものの、国立環境研究所の「日本の温室効果ガス排出量データ(1990~2021年度)」によれば、コロナ禍にあった2021年のCO2排出量は前年よりも増加した。現在の目標値は2030年で46%減(2013年比)、2050年までにゼロを目指しているが、産業イノベーション事業部 サプライチェーン本部 第3部 部長の小沢康弘氏は「いかに高い目標であるか分かる。CO2排出量報告ルールも複雑。法令や規制ではなく、大きな視点で社会を俯瞰(ふかん)しなければならない」とESG(環境・社会・企業統制)視点が必要であると主張した。
サプライチェーン脱炭素支援ソリューションは、複数のソフトウェアやサービスで「企業・組織のCO2排出量の収集・可視化」「製品当たりCO2排出量の計算・可視化」「サプライヤーCO2排出量の測定・管理・削減」「長期・短期の将来CO2排出量の予測」「企業の持続的な削減の取り組み」と5つの課題を解決する。
具体的には、日立製作所が提供する環境情報データベース「EcoAssist-Enterprise-Light」、日立ソリューションズのCO2排出量シミュレーション「グローバルSCMシミュレーションサービス」に加えて、同社のカーボンフットプリント算定支援、SX/DX未来創造型ワークショップ、LCA基盤の独Makersite、サプライヤー向けサステナビリティー評価・管理の仏EcoVadisが加わる形だ。
Makersiteは、製品構成表(BOM)から得る製造業者の原料や工程、サプライヤーの情報を、AIで足する部分を補った上で画面上に展開する。国際標準化機構(ISO)や欧州連合(EU)が推進する環境製品フットプリント(PEF)、スコープ3の温室効果ガスなどに準拠した上で排出量の計算が可能。また、サプライヤーや原料変更に伴う排出量のシミュレーションや販売目標、供給量に基づいたCO2予測にも対応する。
EcoVadisは、サプライヤー企業のベンチマークと改善点を分析するサステナビリティー評価や、サプライベースのリスクを迅速に測定する「IQ Plus」、スコープ3の脱炭素化を促すカーボンアクションモジュールなどを組み合わせたソリューション。175カ国・200以上の業種で利用されているという。
サプライチェーン脱炭素支援ソリューションの概要
Makersiteの概要
Makersiteのデモンストレーション。「Excel」でまとめたBOMを読み込み、各情報を可視化する
EcoVadisの概要
日立ソリューションズは、同ソリューションを製造業の中小企業を対象に販売していく計画。2023年度は1億円の売り上げを目標とし、2025年度は売り上げ7億円・年間受注数25件を目指す。また、2027年度までに16億円、50件を見込む。