富士フイルムビジネスイノベーションは10月19日、業務コラボレーションのクラウドサービス「FUJIFILM IWpro」を発表した。従業員1000人未満の中堅・中小企業向けに11月6日から日本とオーストラリア、香港など8カ国・地域で提供する。
サービス概要
新サービスは、「取り込み・配信」「ワークスペース」「文書管理」「プリント・機器管理」の4つの機能で構成され、国内外の外部サービスとも連携する。取り込み・配信機能では、メールやファクシミリ、ウェブ、紙文書などから業務情報をデータで取り込み・仕分けし、ワークスペース機能でさまざまな業務に利用する。文書管理機能では、ワークスペースでの作業した業務ドキュメントをさまざまな方法で出力・配信・管理できる。プリント・機器管理機能では、文書管理機能で管理しているドキュメントをメールや同社の複合機などで出力できる。
外部連携サービス
連携する外部サービスは、財務、人事労務、営業支援(SFA)、顧客管理(CRM)、マーケティング、支出管理、経費精算、ワークフロー、電子サイン、クラウドストレージ、RPA、チャット、コラボレーション、その他の業務アプリケーションや通信関連などになる。日本向けにはまず15サービスとの連携で開始し、今後増やす予定という。
ワークスペースでは、外部連携サービスも使いながらドキュメントの確認、編集や生成、共有、判断、コミュニケーションを関係者間でスムーズにできるという。ドキュメントやワークスペース単位での各種権限設定やアクセス制御などのセキュリティ対策機能も備える。
ライセンスと1ユーザー当たりの月額利用料は、フル機能の「Standard」が4400円、Standardライセンスの内容から文書管理機能を省いた「Light」が3520円、プリント機能のみの「Print」が400円で、最低5ユーザー契約が必要。また、プリント・機器管理機能のみの「複合機管理」ライセンスは機器1台当たり月額2500円になる。
富士フイルムビジネスイノベーション 取締役 専務執行役員の阪本雅司氏
同日の記者会見で取締役 専務執行役員の阪本雅司氏は、ビジネスソリューション事業本部で掲げる哲学「Customer Happy Experience(CHX)」に基づくもので、6月に発表したIT運用管理支援サービス「IT Expert Services」と並ぶ同事業本部のDXビジネスの中核商品だと説明した。
新サービスの背景について阪本氏は、企業でDXが推進されながらも、依然として紙と業務フローがなくならず、働く場所や人の制約が残存していると指摘。システム化をしてもシステム間の多くのやりとりは手作業のままで情報が散在し、作業の属人化して、担当者に依存した状態にあるとする。そこで企業がこの状態を脱却するために、業務のやりとりの軸を「人」ではなく「情報」に置いた業務コラボレーションの仕組みを設計、クラウド技術で具現化したという。
阪本氏は、「当社は製造業。海老名事業所(神奈川県海老名市)で長年取り組んでいる『全員設計』をヒントにした」と述べる。同氏によれば、かつて製品設計後に協力会社と情報を提供して製造を依頼すると、協力会社から製造上の問題点などを指摘され、設計をやり直すといったことが発生した。これでは非効率的なため、設計段階から協力会社と情報を共有して共同作業する「全員設計」を実践しているという。新サービスは、この経験を基にしていると説明した。
新サービスの基になった「全員設計」
サービス名称のIWproは、「インテリジェントワークキングプロセス(Intelligent Working Process)」という。既存の業務コラボレーションのツールやサービスとの違いについて阪本氏は、上述のコンセプトによる機能と、同社の複合機による紙情報のデータ化およびデータからの柔軟な出力にあるとし、「コラボレーションに必要な情報が既にあっても、それがバラバラになっている。クラウドに情報を集めて人のコラボレーションを可能にすることで、本当の意味でのBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)になる」(阪本氏)
同社は、ビジネスソリューション事業の売上高を2022年の2826億円から2027年度に4000億円以上にする目標を設定している。IT Expert Servicesと今回のIWproの2つを主軸のサービス商品に位置付け、売上目標を達成したいとした。IWproでは、2027年度に国内1万社の利用を目標にしている。
なお、同社は文書管理ソフト「DocuWorks」を長年開発・販売し、クラウド版の「DocuWorks Cloud」も提供する。DocuWorks CloudとIWproの機能が部分的に似通っている。会見後の質疑応答で阪本氏は、「DocuWorksのコンセプトは、(従業員)個人の机上を整理すること。IWproのコンセプトはコラボレーションになる。コンセプトと多くの機能が違うので、新しいブランドのサービスを立ち上げた」と説明した。
「ワークスペース」機能のデモ画面