日立製作所(日立)は、金融・交通・電力といった社会インフラを支えるミッションクリティカルな基幹システムの安定性を維持しながら、オンライントランザクション処理(OLTP)を実行する既存アプリケーションのモダナイズを加速する新サービス「Hitachi Microservices Platform - Paxos Commit Transaction Orchestrator」(HMP-PCTO)を提供開始する。同サービスは、as a Service型ITプラットフォーム「EverFlex from Hitachi」の1つとして提供される。
このサービスは、リアルタイムな金融取引などに利用されるOLTPに対し、クラウドネイティブ技術の1つであるマイクロサービスを適用するために利用される。同サービスを活用することでレガシーアプリケーション資産とクラウドネイティブ技術が混在するハイブリッドクラウド環境を構築、強化でき、大規模なOLTPであっても、小規模な処理ごとに段階的なマイクロサービス化を可能にする。これにより基幹システムの安定性を維持しながらモダナイズを加速させ、柔軟な業務改善を早期に実現できる。
リアルタイムな金融取引などに使われるOLTPでは、ACIDを伴うデータ更新の信頼性が非常に重要となるため、レガシーシステムではトランザクション制御の専用製品などで機能を実現している。しかし、マイクロサービスでは、アプリケーション開発者がトランザクション処理の業務ロジックだけでなく、更新の信頼性も検討する必要があり、その難しさがモダナイズの障壁となっていた。
ACIDとはトランザクションに求められる4つの特性Atomicity(不可分性)、Consistency(一貫性)、Isolation(独立性)、Durability(耐久性)を表した言葉。
基幹システムのオンライントランザクション処理のモダナイズ概要
HMP-PCTOでは、クラウド環境での通信分断に耐えられる信頼性のあるトランザクション制御機能を実現する。既存のミッションクリティカルなOLTP資産の一部をマイクロサービスに切り出した移行段階においても、システム全体のトランザクションの一貫性を確保し、基幹システムの安定性を維持できる。
既存のOLTPシステムに多く残るCOBOLなどのアプリケーション資産を、言語変換なしにマイクロサービス化でき、レガシー資産を「Java」に一括変換するようなモダナイズ手法と比較し、業務サービス改善の効果が早期に得られるという。なおモダナイズの構想策定から環境構築・運用まで、日立の専門チームによる支援を受けることも可能だ。
さらに同サービスを利用することで、新たな業務サービスの立ち上げを迅速化させることができる。例えば、既存の金融取引とポイントサービスを連携させたフィンテックサービスを立ち上げる場合などでは、既存業務サービスのAPIと新たに開発する業務サービスの連携に利用する。これにより、プログラムのコードが複雑になりがちなトランザクション制御のコーディングが不要となり、開発が容易となる。
同サービスでは、開発者がトランザクションを実装する方法を学習し、検証できるように「HMP-PCTO フリー版」の提供を予定している。また日立の既存製品・サービスである「アセット活用開発支援ソリューション」やIT人材育成の支援メニューと組み合わせることで、ユーザー企業の業務サービス開発の内製化などを推進させることも可能だという。
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