松岡功の「今週の明言」

デルのグローバルCTOが語る「ハードウェアベンダーの生成AI対応」とは

松岡功

2023-10-27 11:22

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、Dell Technologies グローバルCTOのJohn Roese氏と、伊藤忠テクノソリューションズ 新事業創出・DX推進グループ DXビジネス推進事業部 AIビジネス部長の寺澤豊氏の発言を紹介する。

「生成AIを活用するにはそれを支えるシステムを整備する必要がある」
(Dell Technologies グローバルCTOのJohn Roese氏)

Dell Technologies グローバルCTOのJohn Roese氏
Dell Technologies グローバルCTOのJohn Roese氏

 米Dell Technologies(以下、Dell)の日本法人デル・テクノロジーズは先頃、年次イベント「Dell Technologies Forum 2023-Japan」を都内ホテルで開催した。この機に米国本社から来日したグローバルCTO(最高技術責任者)のJohn Roese(ジョン・ローズ)氏は、基調講演およびその後にメディアとアナリスト向けに会見を開いた。冒頭の発言はそれらの場で、生成AIについて述べたものである。

 Roese氏は基調講演で、「イノベーションを実現するテクノロジーには、5つの重要な課題がある」として、「AI」「マルチクラウド」「エッジ」「働き方」「セキュリティ」を挙げ、それぞれの課題とそれを解決するDellの取り組みについて説明した。その中から、ここではAIに関する発言に注目したい(図1)。

図1:テクノロジーにおける5つの重要な課題(「Dell Technologies Forum 2023-Japan」基調講演より)
図1:テクノロジーにおける5つの重要な課題(「Dell Technologies Forum 2023-Japan」基調講演より)

 同氏はAIについて、「AIは私たちにとって、これまでのテクノロジーに比べて最も大きな影響を及ぼし、さまざまな変化をもたらすものとなる。中でも生成AIは、私たちが行っている仕事の3分の1をマシンに置き換えるだろう」と述べ、それに対する自身の見解について次のように話した。

 「仕事が自動化できるようになると、その生産性は飛躍的に向上し、私たちはもっといろいろなことができるようになるだろう。一方で、生成AIはまだまだ信頼性や安全性、ガバナンスなど懸念すべき点が少なくない。それでもそれらを改善しながら活用していこうという機運が今、大いに盛り上がっている」

 グローバルで有数のテクノロジー企業であるDellのCTOに「私たちの仕事の3分の1は生成AIに置き換わる」と言われると、それを受け止めて取り組んでいくしかないと思わざるを得ない気がする。この発言を「明言」としてもよかったのだが、筆者は今回、Roese氏がハードウェアベンダー大手として生成AIにどう対応するのかについて、どのように説明するかに注目していたので、冒頭の発言を取り上げた次第である。

 ハードウェアベンダー大手として生成AIにどう対応するのか。Roese氏は「生成AIの活用を支える立場として、2つの役割がある」と述べ、図2を示しながら次のように説明した。

図2:Dellの生成AIソリューション(「Dell Technologies Forum 2023-Japan」基調講演より)
図2:Dellの生成AIソリューション(「Dell Technologies Forum 2023-Japan」基調講演より)

 「1つは、サーバーやPC、ストレージ、ネットワークなどの各コンポーネントの品質レベルを、生成AIを快適に活用できるようにすること。もう1つは、それらをシステムとして機能させた際に生成AIのパフォーマンスを最大限、発揮できるようにすることだ」 さらに、会見では「生成AIは今、大いに注目を集めている。だが、皆さんに理解していただきたいのは、その動作をしっかりと支えるシステムがないと活用などおぼつかないということだ」とも。DellのCTOとしてのプライドと本音が垣間見えた発言だった。

 同社は今、「APEX」と呼ぶ新たなサービス事業にも注力しており、今後はそこでもさまざまなAIソリューションが出てくるだろう。

 Dellの最大の強みは、幅広い製品・サービスにおける「顧客規模」にある。表現を変えれば、顧客が望めば、どのようなAIサービスでも提供するといったスタンスだ。その視点を感じることから、筆者は同社の動向にいつも注目している。今後は生成AIのさまざまなケーススタディーが見られることに期待したい。

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