2023年12月6日、5回目となる「日本サブスクリプションビジネス大賞」が発表されました。150件を超える応募の中から12のノミネートサービスが選出され、その1つに筆者が所属する横河レンタ・リースのDevice as a Service「Cotoka for PC」が選ばれました。残念ながら最終的にグランプリこそ逃しましたが、「サブスク振興会特別賞」をいただきました。日本サブスクリプションビジネス大賞は、サブスクリプションのビジネスモデルを運営する事業者が応募する公募型の賞です。2019年に第1回が発表され、その時の基調講演を日本マイクロソフトさんと一緒に務めた私にとって、今回の受賞は喜びもひとしおです。
今回のグランプリ受賞は、猫のトイレのサブスクであるトレッタキャッツさんの「toletta」でした。「猫のトイレのサブスク?」と、よく分からないかもしれませんが、なんでも猫は腎臓の病気になりやすく、死因の8割が腎臓に関わる病気だそうです。また、その病気になった猫の飼い主の5割は、気づくこともなく愛猫の死を迎えるとのことです。そこでtolettaは、猫のトイレに監視カメラやセンサーを付けて尿の頻度や量などを日々計測し、病気の早期発見を実現するといいます。
このサービスでは、「猫のトイレ」というモノ(ハードウェア)が必要なので、Device as a Serviceと同じモノのサブスクと思われがちですが、そうではありません。監視カメラやセンサーが付いたトイレ自体は、販売(売り切り)されています。一方で、猫に関する記録や分析を行うクラウドサービスをSaaSとして、サブスクリプションで提供します。モノの部分はあくまで販売であり、サブスクリプションではありません。いわゆる「SaaS Plus a Box」という形態です。
SaaS Plus a Boxは、それほど新しい概念ではないのですが、読者の皆さんはあまり聞いたことがないかもしれません。最も有名な事例が、Appleです。Appleは、「iPhone」を販売で提供し、その後「iCloud」や「iTunes」などのSaaSをサブスクリプション提供します。
サブスクリプションは、安定的に収益を上げ続けることができるビジネスモデルとして広まりましたが、最初に大きくもうけられず、利益が出るようになるのに時間がかかるのが弱みです。対して、販売というビジネスモデルは、モノが売れれば、その瞬間に大きな利益を得ることができます。ただし、利益を上げ続けるには新しい商品を出し続けなければなりません。
SaaS Plus a Boxは、この両者のいいとこ取りをしようというビジネスモデルです。サービスを使うためのモノ(ハードウェア)は、販売として顧客に売り切ってしまい、その瞬間に利益を得て、さらに継続的に収益を上げられるように、そのモノを活用するためのSaaSをサブスクリプションとして提供するわけです。そうすることで、サブスクリプションの「なかなかもうけが出ない」「利益を上げられない」という弱み、販売モデルで収益を上げ続けるには「新商品を出し続けなければならない」という弱みが同時に解消されるのです。