NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は1月12日、街中を走行するモビリティー(自動車など)から映像データを効率的に収集・蓄積し、そのデータを活用するための映像分散管理プラットフォームサービス「モビスキャ」を発表した。2024年度上期に提供を開始する。同サービスを用いた「AI道路工事検知ソリューション」(仮称)も提供する。
インフラ保全、災害対策、交通渋滞解消、環境衛生保全など、街中の映像データを効率的に収集・蓄積することで解決につながる社会課題は数多くあるが、これらの課題解決に役立つビッグデータとして活用できるほどの膨大な映像データの収集・蓄積をユーザーが個々で実現することは、コストや人的リソースの点で現実的ではない。そこでNTT Comでは、自社で映像データの取得・蓄積を実施しサービスの開発を進め、実証実験を重ねてきたという。
同サービスは、自動車などのモビリティーに搭載したドライブレコーダーから取得した街の映像を効率的に蓄積する映像分散管理プラットフォームサービスになる。このサービスを通じて、データ活用パートナーが求める映像データの収集と活用が可能になる。
サービスの仕組みとしては、NTT Comが同サービスを搭載したドライブレコーダーをモビリティーパートナーに貸与し、タクシー会社やバス会社などのパートナー企業が通常業務としてモビリティーを運行させる中で収集されたドライブレコーダーからの情報をドコモが収集する。収集した映像に含まれる人物の顔などに対してマスク処理を行うなどの個人情報保護処理を施した後に蓄積し、データ活用パートナーに提供する。
複数のモビリティーから街中の映像データを逐次収集するため、データ量が膨大となる。また、膨大なデータを収集したとしてもそれらの全てをサーバーに蓄積することは、コスト面から難しい。そこで同社は、2023年10月に特許を取得した技術を生かし、映像データの分散管理を可能にしている。
1つは、「最良映像の選別保存機能」になる。複数のモビリティーから同じ場所の映像データを受け取った際、それらの中から最適なデータを選び出して保存する機能で、映像を取得した時間帯、ほかのデータ収集地点との距離、気象庁の天候データとの連携などから最適なデータが選ばれる。
もう1つは「分散データ保存」で、エッジAIによる物体検知判定で不必要と判断された映像データも、各ドライブレコーダーのSDカードに分散保存され、一定期間保持する。サーバーでは、各SDカードで保持する映像のサマリー情報を一覧で管理することで、期間内にデータ活用パートナーからの新たな要求やニーズが発現した際にはデータを提供できる。
また、AI道路工事検知ソリューション(仮称)は、街中の映像を解析し、実際の街中を走行して目視確認していた作業を代替することが可能である。データ収集時にエッジAIによって、事前に指定した物体が検知された場合のみ、映像をサーバーへアップロードする。サーバーAIではアップロードされた映像を分析・スコア化し、一定以上のスコアに到達した映像のみユーザーに提供する。
今後の展開としては、データ活用パートナーと協業し、同サービスを活用したさまざまなソリューションや新しいユースケースを検討していく。電気業界向けの電柱の破損検知ソリューション、自治体向けの道路のひび割れ検知ソリューションなど各業界の課題を解決するソリューションを今後展開する予定だ。また、混雑状況の把握、災害対策、開花状況の観測など、幅広い用途に応じた情報提供も検討していく。