デザイン手法を再発明--ダッソーが描く「AI駆動型デザインの未来」 - (page 2)

鈴木恭子

2024-02-15 06:00

3DEXPERIENCE Platformでコラボ&時短

 ダッソーが提供する、モデリングからシミュレーションまでを一気通貫で連携させるプラットフォームが「3DEXPERIENCE Platform」になる。これは、同社が提供するクラウドベースの製造業向け技術情報共有基盤になり、3Dデザイン、分析、シミュレーション、データ、プロセスを一元的に集約する。これにより開発者同士の設計データの共有や、3D CADと解析ソフトといったツール同士でのシームレスなコラボレーションを実現する。

 同社は、これまでオンプレミス環境での利用が多かった「SOLIDWORKS」(3D CAD)を3DEXPERIENCE Platform上で利用することで、より高い次元のエンジニアリングが可能となり、製品開発の効率化と品質向上が実現できると説明している。

3DEXPERIENCE Works&CRE(Customer Role Experience)担当 シニア・バイス・プレジデントのGian Paolo Bassi氏
3DEXPERIENCE Works&CRE(Customer Role Experience)担当 シニア・バイス・プレジデントのGian Paolo Bassi氏

 Bassi氏は、今後の25年間を見据えたSOLIDWORKSのビジョンとして、「デジタルモデルが正確なだけでは不十分だ。今後は(作成した)デジタルモデルを現実に近いものにする必要がある。製品市場に投入する前段階で、(製品を)構成する素材をあらゆる部分で最適化し、現実世界にどのような影響を与えるのかを検証しなければならない」と語る。

 これらを具現化するソリューションの1つが、SOLIDWORKSの機能を拡張するクラウドベースの製品開発ポートフォリオ「3DEXPERIENCE Works」だ。AIを使ったバックボーンでのモデリングや、設計者同士のコラボレーション機能を提供する。Bassi氏は、これらの機能を活用した高次元のエンジニアリングシミュレーションとして、「マルチフィジックスシミュレーションが可能になる」と力説する。

 マルチフィジックスシミュレーションとは、複数の物理現象を統合してシミュレーションするアプローチを指す。異なる物理分野の相互作用を1つのシミュレーションとして実行するには、ワークフローの効率化や相互作用の正確なモデリング、ソフトウェアの互換性といった観点から、単一プラットフォームで実行する利点は多い。

マルチフィジックス・シミュレーションの概念図
マルチフィジックス・シミュレーションの概念図

 Bassi氏は、「世界がより持続可能な形で前進するには、点と点をつなぎ合わせ、自社が開発した製品が『世界のどこで、どのような形で使用されているか』を鳥瞰(ちょうかん)することが重要だ」と指摘した。

 初日の基調講演では、3DEXPERIENCE Worksを活用したユーザー企業の事例として、日本の長野オートメーション(長野県)が紹介された。

長野オートメーション 代表取締役社長の山浦研弥氏と取締役 設計技術部 メカ2G グループマネージャの遠藤正浩氏
長野オートメーション 代表取締役社長の山浦研弥氏と取締役 設計技術部 メカ2G グループマネージャの遠藤正浩氏

 1982年創業の同社は、完全オーダーメイドの自動化装置や生産ラインの設計・製作を手掛ける。顧客には自動車や医療機器、コンシューマー機器の製造企業が名を連ねる。さらに最近では、自動車業界向けの蓄電池の生産ラインも製造しているという。

 同社は、1992年に2D CADを導入し、2014年に機械設計を目的に3D CADを導入した。ちなみに、3DEXPERIENCE Worksを導入したのは最近のことだそうだ。講演した取締役 設計技術部 メカ2G グループマネージャーの遠藤正浩氏は、導入の背景について「3D CADシステムをさらに活用するため」だと語る。

 同社は、複数のサプライヤーからパーツを調達し、内部で製品を組み立てる。そのため、サプライヤーを含む製造に関わる全ての人が使えるプラットフォームが必須であり、全サプライヤーがシームレスに接続できるものが3DEXPERIENCE Worksだったという。また、業界最高レベルのサイバーセキュリティ対策が講じられているプラットフォームであることも評価ポイントとした。

 クラウド上で意匠や著作物といった知的財産(Intellectual Property=IP)をやりとりするには、強固なセキュリティ対策が不可欠だ。また、AIを利用する際には自社のデータが学習データとして利用されることを懸念する向きもある。

SOLIDWORKS CEO兼R&D担当バイス・プレジデントのManish Kumar氏
SOLIDWORKS CEO兼R&D担当バイス・プレジデントのManish Kumar氏

 こうした懸念に対してKumar氏は、「われわれが顧客のデータを(ダッソーが開発するAIの)学習データにすることはない」と断言。なおダッソーは、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の要件に関する国際規格「ISO/IEC 27001:2017」に準拠している。

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