英国出身のロックバンド、QUEEN「Don't Stop Me Now」をBGMに、創業者をはじめ、Isaac NewtonやGalileo Galileiなどの科学者が肖像画や雑誌の表紙のままに登場して一緒に歌う――製薬大手Pfizerが、2024年2月のアメリカンフットボールの「Superbowl」で流したテレビコマーシャル(CM)だ(関連動画)。
Pfizerは2024年、世界で最も高額と言われる広告スポットに初挑戦した。ビール、エンターテイメント、自動車などに混じって、PfizerがSuperbowlで広告を打った理由は、「自社のブレークスルーをタイムリーに伝える必要がある」からだった。
Pfizer 最高デジタル・技術責任者のLidia Fonseca氏
Adobeが3月末に米国ラスベガスで開催した年次イベント「Adobe Summit 2024」では、Pfizerの最高デジタル・技術責任者(CDTO)のLidia Fonseca氏が、同社の事業戦略におけるコンテンツの重要性について語った。
Pfizerは現在、「科学が勝利すれば、患者も勝利する」として、科学へのコミットと信頼の構築を進めている。Superbowlで流したCMの後半には、同社のがんに打ち勝つ取り組み「Let's outdo cancer」を紹介する映像が流れる。
Fonseca氏によると、Pfizerは、2030年までに自社の医薬品で治療される患者数を倍増することを目標に掲げている。特に、米国で2024年に患者数が200万人を超えたというがんは大きなフォーカス分野だ。今後5年で規制当局の承認が降りる可能性のある薬は25以上あり、「がん治療に新しさをもたらす計画だ」(Fonseca氏)という。Pfizerは2023年、がん治療薬メーカーのSeagenを買収している。
がんだけではない。2023年にPfizerの医薬品とワクチンを利用した人は、世界で6億1800万人に上る。また2023年は、米食品医薬品局(FDA)承認件数が記録的な年となった、とFonseca氏。その中には、多発性骨髄腫、片頭痛などへの対処が含まれているそうだ。
企業が研究開発などを通じて画期的な製品やサービスを作り出しても、患者や医療関係者、パートナー企業がそれについて知らなければ、いかに良い製品であっても使用や消費に至らない。そこで重要な役割を果たすのがコンテンツだ。