デジタルサイネージ広告の勝機--看板ではなく「メディア」と捉える

三浦純揮(ニューステクノロジー/ベクトル)

2024-05-07 07:00

 近年リテールメディアが注目されており、それを契機にデジタルサイネージ広告も盛り上がりを見せている。しかし、デジタルサイネージ広告はユーザー/広告主の2つの視点で戦略的にマネタイズをしなければ、長くは生き残れない厳しい市場である。モビリティーにおけるメディア事業などを運営するニューステクノロジー 代表取締役の三浦純揮氏が、デジタルサイネージ広告におけるノウハウを伝える(全4回の第3回)。

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デジタルサイネージは電子看板ではなくメディア

 「デジタルサイネージディスプレイの設置は完了した。さあ稼働時間中、広告を最大限入れて売り上げを最大化するぞ!」

 そのように意気込む気持ちは、経営者として痛いほど分かります。しかし、広告営業に出かける前に冷静になって、次のような想像をしてみてください。

  • どのチャンネルを見ても、一日中CMしか流れていないテレビ番組
  • 全ページ広告だけの雑誌
  • 広告で埋め尽くされているウェブメディア

 上記のようなメディアはおそらく誰も見たいとは思わないでしょう。誰も見ないということは、広告を出しても効果はゼロ。当然、広告主からは見向きもされません。広告しか表示されないデジタルサイネージも全く同じです。

 ではなぜ、そのような思い違いをしてしまうのでしょうか。それはデジタルサイネージをメディアではなく、「デジタル看板」と捉えているからです。

 「デジタルサイネージ」を日本語に訳すと、「電子看板」や「電子掲示板」となります。電子看板だと考えれば、常時広告を表示したくなるのは自然な流れです。しかし、デジタルサイネージで広告収入を最大化したいなら、電子看板ではなく、テレビや雑誌、ウェブメディアと同様にメディアとして捉える必要があります。

 メディアであるなら、まず考えるべきは広告ではなく、ユーザーに見てもらうためのコンテンツです。コンテンツの質が上がれば、より多くのユーザーの興味・関心を引くことができます。インプレッションが向上した結果、メディア自体の価値や広告媒体としての価値が上がり、広告収入を最大化できるでしょう。

サイネージメディアのブランディングをどう進めるか

 デジタルサイネージをメディアとして社内外に認識してもらうために私が第一に取り組むのは、メディアの方向性やビジョンを反映した「ネーミング」です。命名はブランディングの第一歩です。

 当社のタクシーサイネージメディアは、メディアを通じて広告主の事業成長を後押ししたいという思いを込めて「GROWTH(成長)」と命名しました。喫煙所サイネージメディア「BREAK(休憩)」には、喫煙者の方々がほっと一息つく時間に寄り添うメディアであると伝えたいという意図があります。

 メディア名が持つ役割は、広告主と視聴ユーザーに対するコミットメントでもあります。デジタルサイネージは、一般的には単なる広告面に捉えられてしまうケースが多いので、メディアとして想起してもらうための工夫が必要です。広告主やユーザーに提供できる価値やどのようなメディアでありたいのかを訴求し、各ステークホルダーにメディアとして認識してもらうために、ブランディングを意識したネーミングは重要なステップです。

 独自の造語ではなく一般名詞をメディア名にしているのは、コンセプトをイメージしやすく、覚えやすくするためです。従業員や関わる全ての人々がメディア名に込めた思いを理解し、同じ目的に向かって行動することが、メディアの長期的なブランディング強化には必要です。

 サイネージメディアのブランディングのために、私がもう一つ大事だと考えることは「信頼感」です。当社のサイネージメディアは、サービスサイトと媒体資料の制作に力を入れています。

 内容はもちろん、デザインにも最大限こだわっています。媒体スペックや広告出稿に際する審査基準など、必要な情報をも掲載するだけでなく、情報を見やすく、理解しやすく、伝わりやすくレイアウトする必要があり、デザインの美しさも求められます。

 広告主や広告代理店の担当者は、必ずサービスサイトや媒体資料に目を通します。媒体資料は、ただの広告面ではない、優れたメディアであることを印象付ける重要なツールです。「媒体資料は情報と価格が載っていれば十分」と考える方もいるかと思いますが、サービスサイトと媒体資料のデザインの美しさは、広告主の信頼を獲得し、メディアのブランド価値向上に大きく影響すると考えています。

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