Sansanは5月21日、自社のインボイス管理サービス「Bill One」を強化する「Model 4」を発表した。これまで請求書受領を主たる機能としていたBill Oneだが、請求書発行の「Bill One発行」、経費精算の「Bill One経費」が新たに加わる。
同日に開催した説明会では、同社 代表取締役社長/CEOの寺田親弘氏が「月次決算のリアルタイム化」と機能実装の目的を説明した。Bill One発行は2024年8月ごろ、Bill One経費は2024年6月ごろから機能提供を開始するという。
Sansan 代表取締役社長/CEO 寺田親弘氏(左)、同社 執行役員/Bill One事業部 事業部長 大西勝也氏
2019年6月に登場したBill Oneの「Model 1」は経理担当者がPDF化した請求書をアップロードしてBill Oneでデータ化し、支払いに必要なデータを作成していたが、同年10月には企業の取引先からも請求書を受け取る「Model 2」へ更新。2020年5月になると、すべての請求書をオンライン受領して、Bill Oneで一元管理する「Model 3」に達する。
Sansanの公表データによれば、年次経常収益は68億4400万円、契約社数も2607社まで成長しているが、寺田氏はSaaS企業の成長指標となる「T2D3も上回った。自分が携わったSaaSビジネスにおいて最速の立ち上がりだ」とBill Oneを評した。さらなる成長を目指すために同社は請求書の受領・発行・経費精算の3領域に拡大する。
Bill One Model 4の機能群
Sansanが実施した調査によると、取引先から入金があった際に帳簿で行う入金消込業務を課題と感じている割合は71.7%だった(n=690)。請求先名と振り込み名義人の突合や、合算された複数請求の入金確認を負担と捉え、経理業務は「誰にでもできる作業ではなく、属人的・職人技な業務」だと同社は認識しているという。
請求情報と入金情報の分断を解消するため同社は、銀行代理業者許可を取得して「Bill One Bank」の提供を開始した。同社は住信SBIネット銀行の銀行代理業者として、取引先ごとに仮想口座を付与し、請求書に口座情報を自動で反映する仕組みを用意。デジタルが中心ながらも紙の郵送代行にも対応し、請求情報と入金情報を自動でひも付けて、経理部門で発生していた入金消込業務の負担を軽減するのが「Bill One発行」だ。
寺田氏は、住信SBIネット銀行をパートナー企業に選んだ理由として「APIの拡充や機能的なヒットがあったことに尽きる。ただ、今後も多様な展開を考えている」というが、銀行代理業務の拡大やBill Oneのフルバックエンドソリューション化は目指していないという。
Bill One発行の特徴
組織において従業員が経費を一時的に立て替えるのは珍しくない。しかし、Sansan 執行役員/Bill One事業部 事業部長の大西氏によると「経理担当者の課題を調査したところ、第一はインボイス制度の要件を満たすかどうかの確認。従業員から受け取った領収書を確認する手間が増えている。もう一つは月末月初に業務が集中する点。従業員が経理部門に領収書を提出するのは大半が月末月初だが、経費精算業務に時間を取られると、月次決算業務を大幅に圧迫してしまう」という。
「Bill One経費」は全従業員に法人カードの「Bill Oneビジネスカード」を発行して、カード利用時に領収書のアップロードを依頼するメールが自動的に届く。従業員はスマートフォンなどで撮影した画像をアップロードすると、Bill Oneのインボイス要件チェック機能で是非を自動判定する。現金で立て替え精算した場合も手動で経費精算申請を登録できる。なお、Bill Oneビジネスカードは不正利用を防止するための限度額設定なども事前に設定できる。
寺田氏は「月次決算が加速すると新しい景色が見えてくる。月次決算をリアルタイム化し、われわれ自身はビジネスインフラを目指す」という。
Bill One経費による経費精算