日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(日本TCS)は7月18日、事業説明会を開催し、2026年度に国内売上高10億ドル、国内ITサービス企業の上位20社入りを目指すと表明した。この目標達成を目指す「3X3」戦略について説明した。
TCSは、インド初のIT企業として1968年に創業し、同国初のメインフレーム導入やTATAグループ企業向けのITサービスで成長しつつ、1970年代の米国金融機関向けオフショア開発事業で本格的にグローバ展開を開始。21世紀に変わるタイミングで世界中のコンピューターの誤動作が懸念された「2000年問題」への対応で大きく成長したとし、現在では世界的なITサービス企業として、55カ国で事業を展開する。
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ 代表取締役社長のSatish Thiagarajan氏
日本TCSは、三菱商事とTATAの合弁によりアイ・ティ・フロンティアを統合する形で2014年に発足し、2024年で10周年を迎えた。事業を説明した代表取締役社長のSatish Thiagarajan氏は、「TATAと日本の関係は、明治期にインドの綿花を神戸港に輸出したのが始まり。非常に長い歴史があり、ITでは約35年にわたり日本で事業を展開し、東名阪を拠点に1万人以上のITの専門家が日本企業のITプロジェクトを支援している」と述べた。
同社のユニークなITサービスの提供体制に、「ジャパンデリバリーセンター(JDC)」があるという。日本の顧客を専門にソフトウェア開発などを行う拠点で、インドのプネを皮切りに現在は同国内9カ所あり、日本語を話せるエンジニアなど5000人以上が300社以上の日本の顧客に対応しているという。Thiagarajan氏は、「大手自動車メーカーの顧客と車載用ソフトウェアを開発しているなど、ほかのシステムインテグレーターにはない取り組みをしている。IT人材不足の課題にインドのリソースを活用していただくだけでなく、巨大な人口を抱えるインド市場への進出にも活用いただける」と紹介した。
日本TCSの業績推移と2026年度の目標
Thiagarajan氏によれば、日本TCSの売上高は2019年度が765億円、コロナ禍の2020年度が727億円と減少したものの、2021年度は743億円と復調し、2023年度は914億円で成長を取り戻したとする。2026年度の目標売上高を10億ドル(約1600億円)に設定し、国内ITサービス企業のトップ20社入りを目標に掲げる。「この実現には日本の顧客から信頼されるパートナーとなることが不可欠。目標達成は困難ではないが、人材の獲得が鍵になる」(Thiagarajan氏)とし、この目標を実現する成長戦略として「3X3」を推進しているとした。
3X3戦略では、3つのサービス領域として「AI.Cloud」「IoT&デジタルエンジニアリング」「サイバーセキュリティ」、3つの成長領域として「日本企業のIT子会社」「パートナーエコシステム」「グローバルな日本企業」を設定し、これらの掛け合わせによりビジネス目標を達成させていくとする。
「3X3」戦略のイメージ
3つの成長領域についてThiagarajan氏は、「日本企業のIT子会社が長年かかるITの運用保守コストの削減に貢献し、パートナーエコシステムでは、TCSが仲介役となりグローバルITベンダー各社と日本企業のITを支援するとともに、グローバル展開する日本企業のビジネスに貢献していく」と説明。3つのサービス領域については、専務取締役 グロース&トランスフォーメーションサービス事業統括本部長の森誠一郎氏らが詳細を説明した。