NTTドコモ、データマスキング活用でリモート環境での安全なデータ分析を実現

NO BUDGET

2025-04-16 06:30

 NTTドコモは、データ分析業務の効率化と厳格な個人情報保護の両立を目指し、インサイトテクノロジーが開発・提供するデータマスキングソフトウェア「Insight Masking」を導入した。これにより、従来は出社が必須だったデータ分析業務のリモートワーク体制が構築され、業務効率の大幅な向上とFAQ解決率の改善を実現した。インサイトテクノロジーが4月15日に発表した。

 Insight Maskingは、大規模言語モデル(LLM)を活用し、個人情報を高速かつ正確に匿名化するソフトウェア。メール本文やチャット履歴、顧客関係管理(CRM)のメモ欄といったフリーテキストデータに含まれる氏名、住所、電話番号、会社名などの個人情報や機微情報を自動抽出し、豊富なマスキングアルゴリズムで匿名化・秘匿化する。高性能AIとルールベースの自動検出機能を組み合わせている点が特徴だ。

 NTTドコモでは、FAQ(よくある質問)やチャットボットなど、顧客とのコミュニケーションで得られるデータを分析し、サービス改善につなげている。しかし、これらの自由記入欄には顧客が個人情報を記入する可能性があるため、同社の厳格なセキュリティルールに基づき、データは生体認証が必要な高セキュリティルーム内で扱われ、部外者の閲覧や持ち出しが厳しく制限されていた。このため、分析業務自体に工数がかかるだけでなく、データ分析担当者は必ず出社する必要があり、改善のためのPDCAサイクルを迅速に回すことが困難な状況にあった。

 この課題を解決するため、NTTドコモは作業負荷の軽減と個人情報保護を両立させる方策として、データベースへ格納する前にフリーテキストデータをリアルタイムにマスキングし、データのセキュリティレベルを下げることを検討した。複数のツールを比較検討した結果、自由入力テキストの内容を瞬時に判読し、データベース格納前に個人情報をマスキングできるという要件を満たした、唯一の製品としてInsight Maskingが採用された。

 導入に当たっては、マスキング処理によるレスポンス遅延が懸念されたが、Insight Maskingは多数のアルゴリズムを並列処理することで、顧客に影響のない0.1秒以下という指標をクリアした。また、日本で最も厳しいとされるNTTドコモのセキュリティ要件についても、粘り強いチューニングにより精度指標を達成し、導入以来マスキング漏れの事故を起こすことなく安定稼働を続けているという。

 NTTドコモではInsight Maskingの導入により、オンメモリーでのマスキング処理が可能となり、リアルタイムに匿名化された情報のみがデータベースに保存される仕組みを構築した。これにより、オフィス外からでも高いセキュリティを確保しながらデータ分析ができる体制が整い、データ分析業務の完全リモート化に成功した。結果として、通勤時間や高セキュリティルームへの複雑な出入り手続きにかかる時間が削減され、データ分析業務は大幅に効率化された。さらに、目標としていたFAQの解決率も52ポイント上昇するという具体的な成果にもつながった。

 NTTドコモ 情報システム部の担当者は、「インサイトテクノロジーは、開発途中の課題に対しても迅速に解決策を提示し、時には経営レベルで検討して開発ロードマップを変更するなど、非常に柔軟に対応してくれた。今後、生成AIを活用していく上で、顧客データの安全性と迅速な分析を両立できるツールの存在は大きなアドバンテージになる」とコメントしている。

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