Google Cloud Next

AI導入はもはや米国先行ではない--Google Cloud幹部が明かす「Vertex AI」の急成長

末岡洋子

2025-04-28 07:00

 Google CloudがAI戦略を加速させている。同社が4月上旬に開催した年次イベント「Google Cloud Next 2025」では、音楽生成モデル「Lyria」やAIエージェント開発キットなど、AI関連の大型発表が相次いだ。Vertex AI担当ディレクター 兼 プロダクトマネジメントを務めるJason Gelman氏に、同社のAI戦略について話を聞いた。

--「Vertex AI」の使用がこの1年で20倍に増加したとのことですが、特にどの業界、地域、用途で成長が見られますか。

 特定の地域に限らず、世界規模で関心と採用が高まっている。従来の技術導入では米国顧客が先行し、他地域が追随する傾向があったが、現在のAIではそのパターンは見られない。世界中で同時に採用が進んでいる。

 分野や用途も多岐にわたる。例えば、コーディング分野では、多くの開発者がAIを深く理解・活用し、効率化や品質向上を実現している。導入が急ピッチで進む背景には、投資対効果(ROI)の明確さがある。多くの人々が一般消費者としてAIに触れ、そのメリットを実感していることも大きい。たとえ導入コストがかかっても、AIが生産性を大幅に向上させるなど、それに見合う価値があると考えられているようだ。

 ユーザー生成コンテンツ(UGC)のモデレーションや大規模翻訳など、スケールが重要となるユースケースも存在する。こうした用途では、必ずしも最先端のモデルである必要はなく、むしろ膨大な処理要求に応えられる信頼性が重視される。

Google CloudのJason Gelman氏。前職はAmazon Web Services(AWS)で「Amazon SageMaker」を担当した経緯を持つ。「Googleはハードウェアを所有し、内部に研究チームがあるなど非常にユニークなフルスタックアプローチがある」
Google CloudのJason Gelman氏。前職はAmazon Web Services(AWS)で「Amazon SageMaker」を担当した経緯を持つ。「Googleはハードウェアを所有し、内部に研究チームがあるなど非常にユニークなフルスタックアプローチがある」

 現在、特に利用が急増していると感じるのは、「Veo」や「Imagen」といったメディア生成モデルだ。画像生成のImagenは既にかなり普及し、定着している。動画生成のVeoについては、ユーザーが投稿する動画を見る限り、楽しみながらさまざまな可能性を試している段階のように見受けられる。モデルの扱いに慣れ、活用法を理解し始めたユーザーが、素晴らしい動画を生み出している。これはちょうど1年半ほど前のImagenと同様の状況であり、同じ道をたどるだろう。2026年の今頃には、Veoもかなり定着していると予想する。

 業界もさまざまだが、テクノロジー企業に加え、金融サービス(ヘッジファンド、銀行など)でも先進的な取り組みが進んでいる。

--音楽生成モデルのLyriaも発表されましたが、企業における具体的なユースケースとしては、どのようなものを想定していますか。

 毎年、膨大な量の商業用オーディオコンテンツが生成されている。WPP(世界最大級の広告代理店グループ)をはじめとする広告代理店は、クリエイティブ素材を短期間で制作する方法を模索している。その背景には、動画を中心としたメディアコンテンツのリッチ化がある。これは既存の音楽を置き換えるというより、商業利用可能な音楽を大量に生成したいというニーズに応えるものだ。

 改めて考えれば、われわれの生活の中には実に多くの音楽が存在することに気づくだろう。動画や音楽は、メッセージ伝達において重要な役割を担う。そう考えれば、企業がLyriaを用いて自社のコンテンツにふさわしい音楽を生成するというのが、分かりやすいユースケースだ。テレビCMやインターネット広告のBGMなどが好例で、Lyriaを使ってイメージに合った楽曲を生成するといった活用法が考えられる。

 例えば、「こんな雰囲気の音楽が欲しい。20パターン生成して」と指示し、結果が不満ならプロンプトを追加して改善していく。完成した音楽に動画を組み合わせることも可能で、そうなればユースケースはさらに広がる。

 Google Cloud Nextでは、ラスベガスの画像から動画を生成し、そこにLyriaで作った音楽を付加するデモンストレーションを行った。「こういうイメージの音楽」と指示を与えることで、望む雰囲気の楽曲を作成した。

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