「Model Context Protocol」(MCP)とは何か?--AIとデータを結びつける新標準を解説

Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2025-05-02 06:30

 AIプログラミングにすでに深く関わっている人でなければ、「Model Context Protocol」(MCP)という用語を聞いたことはないだろう。しかし、これから耳にする機会が増えるはずだ。

 MCPは次世代のAI駆動アプリケーションの基礎をなす標準として急速に台頭している。Anthropicが2024年後半に開発したオープン標準であり、AIエコシステムの核心的な問題の解決を目的としている。その問題とは、大規模言語モデル(LLM)とAIエージェントを、巨大で絶えず変化する現実世界のデータ、ツール、サービスにシームレスかつ安全に接続する方法だ。

 AI企業であるAnthropicは、AIアシスタントとそれを支えるLLMが進化する中で、「極めて高度なモデルでさえ、データから切り離されるという制約を受けており、情報サイロとレガシーシステムの背後で身動きが取れなくなっている。新しいデータソースごとに個別のカスタム実装が必要であるため、本当の意味で接続されたシステムを拡張するのが難しくなっている」と説明した。

 Anthropicの解決策がMCPだ。同社によると、MCPは「AIシステムとデータソースを接続し、断片化された統合を単一のプロトコルに置き換える普遍的でオープンな標準」だという。

 確かに素晴らしいことだが、自社の普遍的な標準があらゆる技術的問題の解決策になると主張する企業は多い。しかし、「xkcd」の有名な漫画で指摘されているように、14種類の標準がある中で、全員の問題を解決する単一の標準を提供しようとすれば、すぐに15種類の標準が乱立することになる。

 AI統合のプロトコル、プログラム、アプリケーションプログラミングインターフェース(API)に関しては、そこまでひどくはないが、その方向に進んでいくだろう。現時点でのMCPの有力な競合としては、Googleの「Agent2Agent」(A2A)プロトコル、「Zapier」や「Pica」などのワークフロー自動化ツール、そしてもちろん、ベンダー固有のさまざまなAPIやソフトウェア開発キット(SDK)がある。しかし、以下で説明する理由から、筆者はMCPこそが本物であり、すぐにAI相互運用性の標準になると考えている。

 それでは本題に入ろう。

MCPとは

 筆者はMCPを普遍的なAIデータアダプターだと捉えている。AIを中核とする企業Aiseraの言葉を借りれば、MCPは「AIにとってのUSB-Cポート」だといえる。USB-Cがデバイスの接続方法を標準化したように、MCPはAIモデルと外部システムのやりとりを標準化する。The Linux FoundationのエグゼクティブディレクターであるJim Zemlin氏はこれを別の角度から見て、MCPは「AIシステムの基盤をなす通信レイヤーとして台頭しつつある。ウェブにおけるHTTPのような存在だ」と説明した。

 具体的には、MCPが「JSON-RPC 2.0」に基づく標準プロトコルを定義し、AIアプリケーションがこのプロトコルを使用して、MCP対応のツールやデータベース、サービスから、関数の呼び出し、データの取得、プロンプトの利用を単一の安全なインターフェースで実行できる。

 これにはクライアントサーバーアーキテクチャーが採用されており、次のような重要なコンポーネントがある。

  • ホスト:外部データへのアクセスが必要なAI駆動アプリケーション。例:「Claude Desktop」、統合開発環境(IDE)、チャットボットなど
  • クライアント:単一のMCPサーバーへの専用のステートフル接続を管理し、通信と機能ネゴシエーションを処理する
  • サーバー:ツール(関数)、リソース(データ)、プロンプトといった特定の機能をMCPプロトコル経由で公開し、ローカルやリモートのデータソースに接続する
  • ベースプロトコル:標準化されたメッセージングレイヤー(JSON-RPC2.0)により、全コンポーネントを確実かつ安全に通信させる

 このアーキテクチャーによって、「M×N統合問題」(M個のAIアプリがN個のツールに接続しなければならないため、M×N個のカスタムコネクターが必要)が、もっと単純な「M+N問題」になる。したがって、それぞれのツールとアプリがMCPを一度サポートするだけで、相互運用性を確保できる。開発者は大幅な時間短縮が可能だ。

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