海外コメンタリー

OpenAIはどこへ向かうのか--公益法人化の意図とアルトマン氏が目指すAIの未来

Radhika Rajkumar (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2025-05-09 08:38

 やや予想外の展開として、OpenAIは現在、従来の想定とは異なる方向で組織構造を進化させている。

 同社の組織構造は、「ChatGPT」などの製品を運営する営利部門「OpenAI LLC」と、それを所有する非営利部門「OpenAI Inc」に分かれている。しかし、同社は米国時間5月5日、OpenAI LLCを公益法人(Public Benefit Corporation:PBC)に移行させ、OpenAI Incが引き続き最大の株主として支配権を維持すると発表した。なお、AnthropicやX.aiといった他のAI企業、さらにはAllbirdsやPatagoniaといった小売企業なども、PBCとして設立されている。

PBCへの移行

 OpenAIの経営層は近年、同社がどの方向へ進むべきかを巡って公然と混乱を見せていた。特に2023年後半には、最高経営責任者(CEO)のSam Altman氏が一時的に追放された後、復帰するという騒動があった。伝えられるところによると、これは他の、より使命を重視する目標よりも利益を追求することに関する内部の意見の相違が原因だったとされている。

 Altman氏が従業員に送ったPBC移行の書簡によると、旧来の組織構造は、AI競争が始まったばかりの頃に、OpenAIが業界で主導権を握ることを想定して作られたものだという。また、この変更はカリフォルニア州やデラウェア州の司法長官をはじめとする市民リーダーからの意見に影響されたものであり、これらのリーダーが今後も新しい組織構造に関わっていくことになるとも説明している。

 ただし、Altman氏が今回の変更について説明した内容には、同社が具体的にどのような基準で活動していくのか、その適用基準に関してやや不明確な点も見られた。同氏は書簡で、「私たちは、非常に有能なモデルをオープンソース化したい」と記している。また、「たとえいつも同じ倫理観を持っていなくても、ユーザーが幅広い範囲でツールを自由に使えるようにしたい」とし、さらに「ChatGPTがどのように振る舞うかについては、ユーザー自身が決定できるようにしたい」と述べている。

AIが全ての人に利益をもたらすことを保証

 Altman氏は、OpenAIの製品は「人々が望むことは何でも(幾つかの制限に従う必要はあるが、例えば、自由は他者の自由を侵害すべきではない)、人々が非常に簡単に使用できるようにするべきだ」と述べている。この口調は、OpenAIのモデル仕様における最近の変化とも一致している。同社は大規模言語モデル(LLM)の使用方法に関する以前の基準を緩和し、モデルが応答するようにトレーニングされる方法において「知的自由」を強調している。

 同氏は続けて、「われわれは、民主的な形で開発されるAIが、権威主義的なAIに必ず打ち勝つようにしたい」と語っている。

 さらに、同社が「AIがほんの一握りの人々だけでなく、全ての人に利益をもたらすことを確実にしたい」と付け加えた。そして、諮問委員会がOpenAIを支援し、「われわれの非営利活動が、より民主的なAIの未来をどのようにサポートし、医療、教育、公共サービス、科学的発見などの分野で真の影響を与えることができるか」に焦点を当てると説明した。

 しかし、医療や教育といった社会的な分野でテクノロジーが使われる際には、特に公共サービスを通じて提供される場合、民間の消費者向け製品であるChatGPTなどと比べて、通常より多くの規制を受けることになる。加えて、「DeepSeek」や「Manus」といった注目すべきモデルを開発した中国のAI企業との競争で負けないため、OpenAIは最近、安全性テストにかける時間を減らしているとも報じられている。

 それでも、Altman氏は発表の中で、安全性への取り組みと、AIの目標を人間の価値観と一致させるためのトレーニング(アライメントトレーニング)へのコミットメントを強く打ち出している。「AIの開発が速くなるほど、安全性への取り組みはさらに重要になり、強化していく」(同氏)

提供:Jason Redmond / Getty Images
提供:Jason Redmond / Getty Images

この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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