仮想化について、およそ2カ月間に渡って取り上げてきた。その間に、VMwareのニューヨーク証券取引所への上場、XenSourceのCitrix Systemsによる買収といったように、サーバ仮想化の市場では大きな変化が巻き起こった。まさに今、サーバ仮想化の市場は過渡期にあり、製品も変化し新たなプレイヤーが生まれている状況なのだ。現在注目を浴びているこれらオープンシステム領域でのサーバ仮想化技術は、今後のITシステムインフラの概念を大きく変化させる可能性がある。今回は、サーバ仮想化が抱えている現状の課題や今後の展望についてひも解いていく。
仮想化1.0の時代
「開発環境用途など特定のサーバ上に、ロジカルに仮想空間をいくつか切り出し動かしてみるという試みが、サーバ仮想化1.0と言える」
IDC Japan リサーチ第2ユニット ソフトウェア/ITサービス グループディレクターの井出和之氏は、1.0世代の仮想サーバでは、開発環境や処理負荷の低いファイルサーバなどを動かすことはあっても、実際の業務用トランザクションシステムなどは実サーバ上で動かすものだったという。
作成したプログラムのテストを、さまざまなバージョンのOS上で行う際、異なるOS環境を多数揃えるために実マシン環境を構築すると大きな手間となる。サーバ仮想化ならば、この手間は大幅に削減できるのだ。
サーバ仮想化1.0のもうひとつのメリットが、サポートの切れた古い環境を存続させることが可能という点だ。サーバ統合で管理コストを削減するならば、仮想化など使わずに物理的に統合したサーバに移行したほうがシンプルで確実だ。しかし、数年前に開発しアプリケーションに依存した業務プロセスが残っている場合、それが新たな統合サーバ上で動かなければ業務に支障が出てしまう。
マシンは最新に、環境は古いままを実現させるためにも、サーバ仮想化は有効な手段なのだ。仮想化によるオーバーヘッドがあったとしても、最新の高性能マシンに移行するだけでパフォーマンスが向上するといったオマケがつくことさえある。
古い環境を存続させるデメリット
サーバ仮想化で古いアプリケーションを存続させると手間もかからず、メリットには違いないが、さまざまな問題も内包する。アプリケーションが新しいマシンで動いていても、OSのサポートが切れ、セキュリティパッチの提供が止まっている可能性もある。そうなれば、コンプライアンス上リスクのあるシステムを企業が抱えることになんら変わりはないのだ。
さらに、ライセンスの問題もある。古いOS環境を仮想化環境に移行して動かすことは、本当に行ってもいい行為なのだろうか。OSがプリインストールされていたサーバなどでは、ライセンス上移行できない場合もあるだろう。また古い環境で動いているパッケージソフトウェアなども、仮想サーバで動かすことを想定していないライセンス形態のために問題があるかもしれない。