米Oracle製品の運用管理アウトソーシング・サービスを利用者数に応じて月額課金する--。全世界で米Oracleが実施する新型の運用管理サービス「Oracle On Demand」の姿である。ソフトウェアのライセンスと保守料の枠組みはそのままに、従来のアウトソーシングと比べたコストメリットを武器に、同社技術者による運用管理サービスのボリュームを増やす。
利用する量に応じて課金する形態をオンデマンドと呼ぶ。4月27日、米OracleでOracle On Demandを担当する責任者、同社オラクル・サポート兼オラクル・オン・デマンド担当執行副社長のユーゲン・ロトラー(Juergen Rottler)氏が来日し、Oracle On Demandの行方を語った。結論は2つある。(1)サービス事業は急成長を遂げており、今後のOracleのビジネスの柱になる。(2)ライセンスと保守料の月額課金化はユーザーの需要が小さいため見合わせているが、需要次第で実現する。
運用サービスをビジネスの柱に
今後のソフトウェア・ビジネスの中心はオンデマンドである。ユーゲン・ロトラー氏は米Oracleが生き残る術として、「従来はソフトウェア技術を提供していればビジネスが成立していたが、現在は投資したソフトウェアから最大限のリターンを得る手伝いをしなければならない」と強調した。運用アウトソーシング分野に注力する戦術として、運用アウトソーシングの魅力を高めるオンデマンドの考え方を取り入れたOracle On Demandを推し進める。
米Oracle オラクル・サポート兼オラクル・オン・デマンド担当執行副社長のユーゲン・ロトラー(Juergen Rottler)氏
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事実、米Oracleはサービス企業への転進を進めている。「数年後には米Oracleグループ全体のビジネスの半分を、Oracle On Demandやコンサルティング・サービスなどのサービス事業が占める」(ユーゲン・ロトラー氏)。特に米OracleはSIベンダー同様に運用管理の窓口として機能している。同社は、テキサス州オースチンに自社のデータセンターを保有し、ハードウェアを含めたユーザー企業の情報システム全体のアウトソーシングを請け負う。Oracle On Demandを利用する企業全体の65〜70%が米Oracleのデータセンターに運用を任せている。
日本オラクルによれば、国内でもOracle On Demandは急成長しており、今年の売上げは昨年の5倍、契約社数では3倍に達した。サービスの提供形態は米国と異なる。日本は独特の文化があり、多くの顧客はシステムの設計・開発・運用を一貫して担当するSIベンダーに窓口を一本化する。こうした経緯から日本オラクルは国内に自社のデータセンターを持たず、米Oracle製のソフトウェアに特化した運用サービスを提供。パートナ企業が保有するデータセンターやSIベンダーの運用アウトソーシング・サービスに、日本オラクルの技術者を組み入れる形態を採る。
ライセンスのオンデマンド化は未定
運用管理サービスのオンデマンド化を実現したものの、ソフトウェアのライセンスと保守料は、ラテンアメリカなど一部の地域を除き、ユーザーが購入して所有する形態を採り続ける。ユーゲン・ロトラー氏は「ライセンスにオンデマンド課金のパスを用意することに意味はあるが、ユーザーの多くは(税制上や会計手続き上の理由から)ライセンスを資産として計上したがっている」と指摘した上で、「需要が増えてくれば応えたい」と月額課金の可能性を否定しなかった。
なお、Oracle On Demandは、運用管理の対象ソフトに応じて主に3つのメニューを持っている。(1)データベース管理システム(DB)やアプリケーション・サーバ(AP)を管理する「Oracle Technology On Demand」、(2)DBやAPに加えて業務パッケージを管理する「Oracle E-Business Suite On Demand」、(3)DBやAPに加えてグループウェア製品を管理する「Oracle Collaboration Suite On Demand」、である。