2005年上半期:編集部が選ぶ注目製品トップ10!

編集部

2005-08-16 10:00

トレンド:円熟の時代を迎えたITが向かう先は業務の統合

 企業情報システムを構築するための基礎基盤は円熟の時代に入っている。かつて社会のパラダイムをシフトさせてきたような革命的な動きは起こらないものの、OSや各種ミドルウェアといった基盤技術を実装したソフト群は、地道なバージョンアップを続けている。

 円熟の時代、製品サービスは、仮想化によるIT資源の抽象化を進め、より業務の切り口で扱えるように進化する。ITは特別なものではなくなり、必要な時に必要なサポートを、適切なコストで得られるようになっていく。個々の企業は、他社との差別化を図るための手段として、より実際の業務上の需要に近いサポートを、情報システムから得るようになる。

 以下では、ZDNet Japanの総力を結集した記事の中から、編集部がチョイスした注目記事を「編集部が選ぶ注目製品トップ10」として紹介する。いずれも、円熟期における製品サービスの進化の姿、仮想化による抽象化の進展が見て取れる。

ずばりこれが編集部が選ぶ注目製品トップ10だ!

★ Javaのサーバソフトの合言葉はSOAの時代に突入 ★
1位:日本BEAがESBを軸に新ブランド「AquaLogic」製品群を展開

 Javaアプリケーション・サーバ(APサーバ)大手企業が打つ次の一手は、APサーバ上で動作する各種ミドルウェアになる。米BEA Systemsの新ブランド「AquaLogic」もまたAPサーバである「WebLogic」を利用したミドルウェアであり、Webサービスのハブとなる機構であるESB(Enterprise Service Bus)を中核に、SOA(サービス指向アーキテクチャ)を実現するためのメッセージ基盤となる。

 AquaLogicが代表するSOA基盤(ESB製品群)によって、企業は各種の業務アプリケーションを連携させて、より付加価値の高い新たな業務を運用できるようになる。業務統合によって得られる典型的なベネフィットは、個々の業務アプリケーションから得たデータを統合化し、単一のポータルソフト上から閲覧し業務実績を分析するといった使い方である。

★ サラリーマン全員がデータを活用して意思決定する時代 ★
2位:SAPがEAIツールを機能拡張、現場の実務担当者が基幹データをリアルタイム分析

 EAI(アプリケーション統合)をリアルタイムに実施する。これが何を意味するのかと言うと、分析ツールのユーザーが、経営者から現場の実務担当者へとシフトするということだ。

 従来のBIツールは、DWH(データ・ウェアハウス)のような、時系列の蓄積データを分析の対象としていた。過去のデータのトレンドを任意の切り口で調べるという経営者の需要を満たす製品だった。

 一方で、SAP Analyticsが代表する最近の風潮は、DWHに蓄積したデータではなく、オンライン・トランザクションが常時発生している基幹業務の生データを直接、分析の対象とする。現場の営業担当者の意思決定を支援することで、営業担当者が自社商品の値下げ率を自分で決定できるようになるということである。

★ Webサービスを使いこなせば企業価値がより高まる ★
3位:日本オラクルが「BPEL」準拠の業務プロセス管理ソフトを125万円で提供

 Webサービス同士を連携させるワークフローをXMLで記述するための言語がBPEL(Business Process Execution Language for Web Services)である。米IBM、米Microsoft、米BEA Systemsが仕様を固め、標準化した。

 BPELで記述した業務プロセスは、BPEL準拠の製品であれば利用可能である。米Oracleは、APサーバ・ベンダーとしてBPEL対応を全面的にコミットするBPELの有力企業である。すでに現場のユーザー企業は、BPELというモデリング手法を用い、Webサービスを組み合わせたシステム構築ができるようになっている。

★ できるビジネスマンはマルチコア問題を語り合う ★
4位:オラクル、マルチコアチップへのライセンス体系を変更

 サーバ機のCPUは、1つのCPUに複数のコアを持つマルチコアへと進化している。CPUを複数使うマルチプロセッサ構成と並び、複数コアを用いるマルチコアは、CPU性能を向上させる手段として一般的になりつつある。こうしたマルチコアCPUを、CPUライセンスを採用するソフトウェアがどう扱うかという問題は、興味深い話題である。

 マルチコアであっても1CPUであれば1CPUとして試算する他ベンダーに対して、米Oracleは従来、1コアごとにCPUライセンスを適用していた。今回新たに、1つのコアが出す性能を、CPU1個が出す性能の4分の3に相当するというライセンス体系を打ち出した。有力ベンダーである米Oracleからの回答という意味でインパクトは大きい。

★ 商用ベンダーに挑戦するオープンソースの姿を知る ★
5位:JBoss、EJB 3.0対応の「JBoss Application Server 4」などを発表

 APサーバの「JBoss」は、オープンソースとして配布されているEJB(Enterprise Java Beans)コンテナである。分散処理機構を持つEJBを扱うAPサーバという点で、オープンソースでありながら、米BEA Systemsが開発したWebLogicや米IBMが開発したWebSphereの直接のライバルとして君臨している。

 J2EEに準拠したAPサーバを実装する場合、APサーバは大きく、サーブレットを扱うためのServletコンテナと、CORBA/IIOPによる分散処理機構を持つJava部品を扱うためのEJBコンテナに分かれる。Servletコンテナの代表はApache Jakarta ProjectのTomcatであり、EJBコンテナの代表は、オープンソースであればJBossとなる。

 J2EE仕様を実装したソフトのうち、EJBコンテナを除くソフト群は、WebSphereやWebLogicなど商用EJBコンテナから見ればEJBコンテナのライセンスの販売促進として位置付けられる。アプリケーション開発用のソフト部品を広めて開発しやすい環境を作れば、結果的にEJBコンテナのライセンスが売れるからである。

 こうした状況の中、商用EJBコンテナのライセンス収入を唯一脅かす存在が、直接のライバルとなるJBossである。JBossはSIベンダーを技術者として認定し、SIベンダーの協力の下でサポート・サービスを展開している。ユーザー企業はJBossにも目を光らせ、多くの選択肢の中から製品を評価したい。引用した記事の中、JBossがESBの提供を予定するという興味深い一文が読み取れる。

★ 業務担当者はコンピュータ資源の大海を泳ぐか ★
6位:オープンソースの仮想化ソフト「Xen」、マルチプロセッサ対応へ

 仮想コンピュータを実現するVMwareのように、コンピュータ資源を仮想化して複数のOS環境を利用するためのオープンソースがXenである。仮想化の恩恵は、サーバであればサーバ統合、クライアントであれば特定の業務アプリケーション環境を保持する用途で役に立つ。

 単一CPUのコンピュータを仮想的に複数のコンピュータとして使う需要を一歩進めると、複数CPUのコンピュータ、あるいはサーバ・クラスタを仮想的なコンピュータ資源のプールと見なし、コンピュータ資源のプールを任意の数のコンピュータとして利用するという使い方が出てくる。

 直近の需要としては、マルチCPUを使って動作するOSやアプリケーションをマルチCPU構成で利用する使い方がある。XenはこうしたマルチCPU化したコンピュータ資源の仮想化ソフトへと進化を遂げる。米Red Hatが配布するオープンソースOSのFedora Core 4もXenを搭載する。

★ もはやコンピュータの種類の違いなど問題ではない ★
7位:eServerからSystemへ--日本IBMが新型メインフレームを発表

 コンピュータ資源の仮想化とSOAが進んだ世界では、コンピュータの種類が何であるかは重要ではなくなる。大切なことは、処理能力の価格性能比と拡張性、可用性と運用管理コスト、など、需要に応じて処理能力を提供するユーティリティ・コンピューティングを支える個々の要素になる。こうした世界では、メインフレームはかつての輝きを取り戻す、というのが、メインフレーマである米IBMの考え方である。

 米IBMは、メインフレームやオフコンを含めた全コンピュータ製品のブランドを、「IBM eServer」から「IBM System」へと変更した。メインフレームのeServer zSeriesはSystem zへ、オフコンのeServer iSeriesはSystem iへ、IAサーバのeServer xSeriesはSystem xになる。この背景には、アーキテクチャの垣根を見えにくくする狙いがあるのではないだろうか。

★ 何時でも何処からでも一極集中化した資源にアクセス ★
8位:MetaFrame新版をブランド名変えて出荷、SSL-VPN装置もラインアップ

 MetaFrameという呼称は長らく、Windowsの画面情報端末ソフトの代名詞として使われてきた。それも情報システムに携わるエンジニアからは「メタフレーム」ではなく「めた」と呼ばれるのが通例だった。ここまで親しまれてきた名称を捨て、Citrix Presentation Serverという名称に変換した背景には、セキュリティを中心とする製品ライナップを増やすという狙いがある。

 画面情報端末はコンピュータ資源の一極集中化というメリットがあるが、現在の一極集中化は、セキュリティ対策としての意味が強いという時勢がうかがい知れる。従来、資源の一極集中化は、クライアント管理コストの削減が主な狙いだった。ネットワーク帯域を必要としない画面情報端末はまた、分散していたサーバ資源をデータセンターに集中化させる動きも推進した。こうした画面情報端末は現在、データ漏えい対策の手段として躍り出てきた。

★ あなたも気付かないうちにXMLユーザーになる ★
9位:マイクロソフト、Office 12でXMLベースのファイルフォーマットを採用へ

 米Microsoftは、あまり知られていないがXMLベンダーである。データベース管理システムやサーバ間通信といった情報システムのコア機能では、XMLの標準化と実用化に早くから取り組み、XML普及の流れを作ってきた。

 米Microsoftが狙っているのは、誰もが意識することなくXMLを用いて異機種間でのデータ交換をできるようにすることだ。ここで、誰もが利用するアプリケーションとしてOfficeが位置付けられる。Office文書はXML形式で表現できる。業務アプリケーションを開発する際には、メタデータ記述言語であるXMLの利点が活かせる。Officeで扱うデータをどのようにXMLで表現するかもまた、XMLで表現できる。

★ 望みさえすれば叶う!ITが自発的に行動する世界 ★
10位:IBM、自律コンピューティングの支援サービスを発表

 サーバ資源の仮想化と抽象化には、動的な性能のチューニングという問題が含まれる。米IBMはこの問題に取り組む姿勢をアピールしてきたベンダーである。IBM社内の研究開発案件として、コンピュータ・システムが自律的に処理性能の割り当てを実施する自律コンピューティングを掲げてきた。

 記事を見ると、IBM社内で得た自律コンピューティングのノウハウを、ユーザー企業向けのコンサルティング・サービスとして提供するという。研究案件だった自律コンピューティングが、実際のユーザー事例、実際の情報システムの稼動事例として出てくる時代になったということである。

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