「日本版SOX法を含む法令順守(コンプライアンス)対応へのIT投資は2009年に7000億円を超えるだろう」--。調査会社IDCジャパンのリサーチバイスプレジデントである佐伯純一氏は11月10日、コンプライアンス対応が企業のIT投資を増加させるとの見通しを明らかにした。
佐伯氏によれば、日本企業のIT投資額全体は2004年に約9兆円から2009年には10兆円になるが、その間の平均成長率は1.7%と全体の伸びは極めて低いものになるとしている(ビジネスコンサルティング分野は含まず)。
- 「米でSOX法に対応するコストは当初の見積もりを超えている」と語る佐伯純一氏
しかし、2008年に施行されると見られる日本版SOX法にあわせて財務監査、財務監査を含めた企業の内部統制のための投資が、ビジネスコンサルティング分野を中心に新たな投資が起こるとIDCジャパンでは予測している。
「日本版SOX法に直接関連するビジネスコンサルティングやITコンサルティング、ソフトウェア関連投資は2006年に急速に立ち上がり、2007年にピークを迎える」(佐伯氏)。
日本版SOX法に直接関連するIT投資額は2006年に約1000億円、2007年に3000億円を上回ると佐伯氏は予測。2008年と2009年では3000億円を下回るだろうとしている。
だが「日本版SOX法が刺激となって、企業統治をより包括的に実現するためのIT投資が増加する。2008年以降は、メンテナンス段階に移行。2009年には企業のIT投資全体の7%が企業統治を意識したITインフラの整備、アプリケーション、関連サービスに向けられるだろう」と佐伯氏は見ている。佐伯氏の予測では、2009年時点で日本版SOX法に直接関連したIT投資額が3000億円弱であり、そのほかの企業統治に関連したIT投資額が4000億円強になるとしている。
企業のIT投資の動きについて佐伯氏は、「ストレージに対する投資が真っ先に動き出す」と見ている。ストレージは、社内文書の管理・保管・アクセス管理のための基本要素となるからだ。また、投資が早く動く分野としてセキュリティとネットワークも挙げている。
SOX法に対して米企業には「全社的・包括的に取り組むことで、企業価値のさらなる向上を実現できるとの認識が広がった」(佐伯氏)。だが佐伯氏は「現実として米企業の対応は法律の施行に間に合わせることが先決となり、企業価値の向上は次のステップになってしまっている」という実態を指摘している。
日本版SOX法が日本企業に与える影響について、佐伯氏は「企業統治の充実は、不正経理や情報管理の不備による信用の失墜から企業を護る。加えて、業務プロセスの見直しを進めて問題点や課題への対応を促すことになる」と説明。
「企業統治を充実させることは、日本版SOX法が直接関係する財務はもちろん、すべての業務プロセスに密接に連携するITを積極的に活用することで、従業員の意識改革、生産性の向上とリスク削減に貢献して、企業価値の向上に結びつく機会と捉えるべきである」(佐伯氏)
佐伯氏の予測は、11月10日にIDCジャパンが開催したカンファレンス「Japan e-Document Platform Vision 2005」の講演「日本版SOX法とITへのインパクト」で発表された。