重要なのは情報処理ではなく情報そのもの--ILM戦略を語るEMC

藤本京子(編集部)

2006-02-28 21:25

 米国はもちろん、日本、アジア、ヨーロッパ諸国の全地域において10四半期連続の2けた成長を達成したEMC。2月9日に行われた記者会見でEMCジャパン代表取締役社長のEdward Neiheisel氏は、「全ストレージ市場の2005年の成長率のうち、40%はEMCの成長によるものだった」として、同社が好調な伸びを示していることを強調した。

 それは、同社が「ストレージベンダー」から、「ストレージと情報管理ソリューションを提供する企業」へ、そしてさらには「情報インフラベンダー」へと変革を遂げたことにある。ここ数年にわたり、同社が多くのソフトウェア企業を買収していたのもそのためだ。

 買収した各ソフトウェア会社は、それぞれが「情報ライフサイクル管理」(ILM)を推進するにあたって重要な意味をなす。EMCはILM実現に向け、どのような製品やソリューションを提供しているのか。EMCジャパン マーケティング統括本部 プロダクト&ソリューションマーケティング本部 本部長の伊藤重雄氏に聞いた。

--すでにEMCではILMのコンセプトについて何度もメッセージを発信していますが、ILMの意義と、ILM実現のために必要なことを再度説明してもらえますか。

「情報そのもの」の重要性について語る、EMCジャパンの伊藤重雄氏

 ILMの基本的なコンセプトは、顧客が現時点で抱えるストレージの構成要素を見直し、サービスレベルに対して足りない部分とオーバースペックになっている部分を最適化しようという考えです。

 ストレージを最適化するには、まずストレージを階層化する必要があります。つまり、データの重要度に合わせて、価格とスペックに見合ったストレージを用意するということです。ただし、ハードウェアだけで階層化は実現できません。サービスレベルを定義し、データを自動的に階層化されたストレージに保存する必要があります。そのための設定やポリシーエンジンなどの振り分け機能がILMの鍵となります。その役目を担うのがソフトウェアです。ハードだけでなく、ソフトがなければILMは実現できないということです。

 これまでストレージベンダーは、データの中身について議論することがありませんでした。ストレージベンダーにとって大切なのは、データの容量や使用頻度ですから。しかしそれだけではILMを実現できないのです。ILMでは、データの中身や情報そのものが重要な意味を持ちます。そこでデータの中身を把握し、内容に応じた管理ができるソフトウェアが必要となるのです。そのためにEMCは数々のソフトウェア企業を買収しているのです。

--EMCの買収した企業について、おさらいさせてください。EMCは、2003年7月のLEGATO Systemsの買収から始まり、同10月にはDocumentumを、12月にはVMwareを、2004年10月にはDantz Developmentを、同12月にはSMARTSを、2005年8月にはRainfinityを、同10月にはCaptiva Softwareを買収しています。それぞれの買収の意味するところを教えてください。

 LEGATOは、データの保護やリカバリ、階層型ストレージ管理機能などを提供していた企業です。Documentumは、非構造型データやコンテンツ管理機能を提供しています。VMwareはサーバの仮想化技術を持つ企業です。Dantzは中小規模企業向けのバックアップおよびリカバリソフトウェアを抱え、データ保護ソリューションを提供していました。SMARTSは、ネットワークシステムの管理ソフトを提供する企業で、RainfinityはNASの仮想化技術を持っています。Captivaは、紙の情報をデジタルフォーマットに変換する入力管理ソフトウェアを提供しています。

--VMwareの買収がよく理解できないのですが、サーバの仮想化技術はストレージにどういう意味をもたらすのでしょうか。

 VMwareは、EMCが情報インフラベンダーへと変革するにあたって必要な技術を持っている企業です。われわれは情報インフラベンダーとして、「情報」を中心としたシステムを構築する必要があるのですが、そのシステムとは、情報の入ったストレージが中心にあり、その周りに多くのサーバが結合しているというイメージになります。通常、サーバベンダーの考え方は、サーバが中心で、ストレージは情報が保存されている場所に過ぎません。しかし、顧客にとって一番重要なのは情報です。情報を中心に業務が流れていくのですから。

 VMwareはEMCにとって主に2つの意義をもたらす企業です。まずその1つは、VMwareの技術により、ストレージ同士がネットワークでつながるStorage Area Network(SAN)を加速できることにあります。われわれのようなネットワークストレージベンダーはSANを推進していますが、稼働中の仮想マシンを切断することなく別のサーバに移動させることが可能な「VMware VMotion」という機能を利用するにはSANが必須なのです。つまり、VMwareの製品が売れると、必然的にSANも浸透し、ストレージベンダーの市場も拡大することになります。特に日本では、ミッドレンジの分野でサーバとストレージを1対1で接続するDiract Attached Storage(DAS)からSANへの移行があまり進んでいません。VMwareのような製品を提供することで、SANへの流れを加速できるのです。

 もうひとつの点は、サーバの仮想化により、サーバがコモデティ化される点です。サーバがコモデティ化されると、サーバはストレージ上にあるファイルのひとつとなります。つまり、ファイルの移動やレプリケーションの仕組み作りが簡単になり、われわれの推進するインフォメーションセントリックな(情報を中心とした)インフラが構築しやすくなります。こうした観点から、VMwareが広がることでEMCのビジョンが達成できることがわかるかと思います。

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