「ITを次の10年間の主要産業に育てていかなければならない。IT分野に携わる人材を2万人に、会社を6000社に拡大し、1兆円産業にしたい。そのためには、IT技術者のスキル向上が必要だ。人材育成という命題を達成するためにはマイクロソフトの支援が不可欠となる」(上田市長)
札幌市のIT化推進に向けマイクロソフトでは、利益を地域に還元できる仕組みを実現することが重要という。企業や政府機関、教育機関と協力することで、より地域に密着した取り組みを進めている。たとえば、札幌支店を拡張することで、各種セミナーやサロンなどに利用できるスペースを確保。パートナー企業の集いの場を提供する計画だ。
また、課題である下請け構造からの脱却を実現するためには、ITシステムの上流工程を設計できるITアーキテクトの育成が必要であり、そのために「何が足りないのか、何をすればよいのか、必要なカリキュラムは何であるのか」を明確にしなければらない。その取り組みのひとつが「IT人材雇用プログラム」の実施だった。
Huston氏は、「(札幌市に限らず)日本の問題は高度なIT教育を受けた若者が足りないこと。今後、高度なIT教育を受けた人材の育成が急務といえる。マイクロソフトは、そのための支援も提供する準備はできている」と言う。まずは、IT技術者の価値を高めることが最大のミッションといえる。
上田市長は、「単なる営業拠点ではなく、地域貢献のための拠点として位置づけてもらえることには非常に感謝している。現在の札幌市の課題は、若者を引き留めておくだけの魅力に欠けること。札幌市をより魅力的な市にするために、必要な努力は惜しまないつもりだ」と話している。
“100−1=0”が日本の品質管理
マイクロソフトがこれほど日本市場にコミットするのは、日本市場が同社にとって第2位の市場であることはもちろん、「日本から多くのことを学んだから」(Huston氏)だとという。
従来、マイクロソフトでは、米国本社でソフトウェアを開発し、それを1〜2年かけて各国向けにローカライズしてきた。しかし1995年ごろからインターネットが爆発的に拡大すると日本のビジネスも米国と同等のスピードで拡大しはじめた。そこでマイクロソフトでは、日本向けの製品は日本国内で開発する体制を確立した。現在では400名以上の開発者が日本向け製品の開発を行っている。
「日本ではまた、品質に対する要求が非常にシビアだった。そこで、品質管理においても日本から多くを学んでいる」(Huston氏)
日本の品質管理についてHuston氏は、「“100−1=0”というのが日本から学んだこと。日本市場では、ある製品にどんなに素晴らしい99の機能があっても、ひとつのバグにより、その製品に対する評価がゼロになってしまう」と話している。
対談の最後にHuston氏は、「IT業界は、ものすごいスピードで多くの変化がもたらされている。今後の20年間は、これまでの20年間以上にエキサイティングなものになるだろう。変化に対応できなければ生き残っていくことはできない、マイクロソフトも札幌市と共に変化していきたいと思っている」と述べた。
上田市長は、「マイクロソフトと札幌市は、Win-Winになれる関係。マイクロソフトの協力は不可欠だが、それだけに甘えることなく、札幌市も自立していかなければならない」と話し、握手で対談を終えた。