景気回復が鮮明になり、日本の製造業は、過去最高益を更新する企業も目立つほどの好調さを見せている。一方で、トヨタ自動車のリコール問題を筆頭に、品質を最大の売りにしている日本のメーカーらしからぬ話も漏れ聞こえてきている。
この要因として、製造業の製品開発、管理の方法が、高度成長期とはかなり異なっていることが背景に挙げられる。キーワードは「商品開発のデジタル化」である。
製品開発における企画、設計や耐久性のテスト、部品の受発注、販売、回収に至るまで、現在の製造業の業務プロセスは高度にデジタル化されている。製品のゆりかごから墓場までをコンピュータによってデジタル管理していこうとする取り組みは、PLM(Products Lifecycle Management:プロダクトライフサイクル管理)と呼ばれている。ものづくりのデジタル化にはまだ不完全な要素も多く、「デジタル」への過信が問題を引き起こしているとの声もある。
ここでは、デジタル化によるものづくりを実現させるためのツールとして、PLMが製品開発の現場をどのように変えていくかについて考えてみたい。
PLMのイメージ
かつて、日産自動車は、「技術の日産」というキャッチコピーとブランドイメージにおごり、ユーザーの声に耳を傾けなくなった。結果として、日産車はデザイン性に劣る、などのイメージが定着し、さらには、長引く不況もあいまって、倒産の危機に立たされるまでに凋落したことは記憶に新しい。それを救ったのがカルロス・ゴーン社長だった。いわゆるゴーン革命によって日産が低迷期を乗り越え、V字回復を果たしたのはあまりにも有名な話だ。
一般に、こうした改革を下支えした「道具」にスポットライトが当たることはあまりない。PLMツールとは、そうした道具である。
PLM導入の最大の目的は売り上げの最大化にある。製品に関連するさまざまな情報を、企画段階から設計、開発、製造、維持管理、廃棄に至るまでのライフサイクル全体にわたって、部門を横断した形で全社的に管理するための手法なのである。
さらに、PLMは、製品を構成する部品をBOM(部品管理表)に沿って細かく管理し、その情報を駆使することで、部品の共通化や標準化を図り、コスト全体を削減するという重要な役割も果たす。