本来、「NGN」は、ネットワーク業界の言葉である。だが、最近では、IT業界でも頻繁にこの言葉を聞くようになった。NGNは「Next Generation Network」の略。日本語では、そのまま「次世代ネットワーク」と訳される。果たして、NGNとは何か。そして、IT業界とはどのような関係にあるだろうか。
100年ぶりの通信インフラの大転換
NGNとは何なのか。
それを、ごく簡単に説明するならば、100年の歴史を持つ電話交換機による通信ネットワークが、IPベースのネットワークへと刷新される、いわば、通信の歴史上においても、過去に例がないほどの大きな転換であると言えるだろう。しかも、これは日本だけの話ではない。全世界の主要国における通信ネットワーク基盤が一斉に変わろうとしているのだ。
NGNとは、一般的には「IP技術をベースとした次世代ネットワーク」のことを指す。
これまでの回線交換による仕組みでは、家庭やオフィスに設置されている固定通信網と、携帯電話や無線LAN通信などのモバイル網、そして、企業などに広がりつつあるIP通信網といった異なる通信網が、それぞれに独立し、個別のサービスを提供する形となっていた。
一方、NGNの世界では、IPをベースとした固定通信網と、IPベースの携帯電話や無線LAN通信などのワイヤレス通信網とが統合される。固定電話と携帯電話を区別することなく利用できるサービスや、音声、画像、映像などをシームレスにやりとりするといったことが可能になる。
回線網が一本化されることで実現されるサービスの具体的な例としては、固定電話と携帯電話がひとつの電話番号で利用できるFMC(Fixed Mobile Convergence)が挙げられるだろう。
また、IP網でありながら、QoS(Quality of Service)による通信速度や通信品質を保証し、セキュリティに対しても高い信頼性を実現できるのが、NGNの特徴のひとつである。
IP網はインターネットの接続サービスなどに代表されるように、通信速度を保証しない「ベストエフォート型」がこれまでの基本だった。だが、NGNでは、音声通信の音声品質や、映像通信の映像品質といった通信の品質レベルを定義し、保証できるようになる。基幹通信ネットワークとして必要とされる信頼性を実現した上で、IPをベースとして構築されるネットワークがNGNというわけだ。