最近よく耳にする「NGN」で何が変わるの? - (page 2)

大河原克行 2006年10月31日 15時34分

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ITU-Tで標準化が進む

 NGNに関しては、これまで、ITU-T(国際電気通信連合の電気通信標準化部門)やETSI(欧州通信規格協会)といった標準化機関を通じて、全世界規模での標準化が図られてきた経緯がある。

 ITU-Tでは、Y.2001勧告のなかで示した「General Overview of NGN」を、NGNの基本的概念として定義。ここでは、広帯域であること、QoS制御が可能であること、パケットベースのネットワークであることといった要件のほかに、サービス機能と転送技術が分離し、連携してサービスが提供されること、アクセス制限をしないオープンインターフェースであること、汎用的なモビリティとユビキタスサービスを提供できることなどが示されている。

 ネットワークに依存しない新たなサービスが容易に構築できるという点も、ここで定義されたNGNの重要な要件だといえる。

NTT、KDDIが導入に動き

 すでに、NGN導入に向けた動きははじまっている。

 NTTは、2006年度をNGN導入の第1ステップとし、基幹ネットワーク部分において、中継ノードや光波長伝送装置など中継系の通信システムの構築を開始し、2006年秋からはフィールドトライアルや一部サービスの試行を開始することになる。

 また、第2ステップとして、2007年度後半以降、加入系の通信システムの構築開始や、ITU-Tの標準規格に準拠したマルチメディア通信を実現するIMS(IP multimedia subsystem)方式によるサービス制御機能の導入を開始し、本格的な次世代サービスにも乗り出す。2010年に目指す「光回線、3000万人加入」時には、IP電話や映像配信を含んだマルチキャスト通信、双方向データコミュニケーションなどを幅広く活用できる環境が構築されることになるという。

 こうした取り組みは、NTTが先ごろ発表した中期経営計画でも触れられており、NGNが中期的な重点課題のひとつであることが示されている。

 一方、NTTに先駆けてNGNに取り組んでいるKDDIは、2005年度から、すでに固定通信網のIP化に乗り出しており、2006年度には、NGN関連だけで1000億円以上の設備投資を予定している。2007年度末には、固定通信回線網をすべてをIP化する計画であり、これをベースに、固定IP網および第3世代から第4世代にかけての携帯電話、新たな無線方式をも統合したサービスを提供できる「ウルトラ3G構想」の実現に挑む考えだ。

IT企業にもビジネスチャンスを創出

 NGNに力を入れているのは通信会社だけではない。実は、NGNに前向きに取り組もうとしているIT企業も少なくないのだ。

 事実、NECや富士通、日立製作所といったIT企業の経営トップが、最近の会見のなかでは「NGN」という言葉を頻繁に用い、中期的な経営戦略のキーワードのひとつに位置づけている。

 例えば、NECの場合、今年4月に社長に就任した矢野薫社長は、経営方針の最重点課題に「NGN」を掲げ、すべての事業をNGNを機軸とした形で推進する姿勢を見せている。

 NECでは、NGNを支える光伝送対応製品やIP機能を搭載したルータやスイッチの開発、プラットフォーム製品群の投入といった、長年に渡る通信ネットワークの強みを生かす一方、それだけに留まらず、その上で提供されるサービスや企業向けソリューション、あるいはNGNのサービス運用に欠かせないサーバやミドルウェアなどの製品群にまで踏み込んだ領域をNGNと捉え、事業を推進していく姿勢を示している。

 具体的には、音声・統合ネットワークシステムや、固定・モバイルネットワークシステム、リアルタイムコミュニケーション基盤といったソリューションを活用した企業ネットワークの刷新、シンクライアントシステムやグリッドコンピューティングといった新たなシステム基盤の提供。さらには、次世代CRMやプロードバンドオフィス、RFIDを活用したリアルタイムSCMなど。また、NGNと連携した課金システムや、認証・決済システム、著作権管理システムといった技術をベースに、個人向けサービスプラットフォームの提供や、電子カルテや自治体住民サービスなど、医療分野向け、自治体向けのソリューション提案も、NGNをベースとした事業のひとつに位置づけている。

 つまり、新たなネットワーク基盤上で提供されるサービスもNGNの範囲内に含めているのだ。

 NECの矢野社長は、「NGNは通信キャリア向けの事業機会が創出されるだけに留まらず、企業、官公庁、コンシューマーまで幅広い事業機会を創出する」として、NGN関連領域への研究開発投資を前年度比2倍に増やす計画を打ち出している。

 このように、NGNは、通信産業における一大変革であるのに加えて、IT業界にとってもビジネスチャンスを創出する大きな出来事としてとらえられているのである。

KDDIのウルトラ3G構想 2005年6月に「ウルトラ3G構想」を発表したKDDI社長の小野寺正氏。同社やNTTといった通信系だけでなく、多くのIT企業がNGNによって生まれる新たな市場での地歩拡大を目指している状況だ。

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