クックパッドが困難を極めたシステムとデータの連携プロジェクト

渡邉利和 2018年09月11日 06時00分

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 インフォマティカ・ジャパンが8月末に開催した製品発表会で、ユーザー企業としてクックパッドのコーポレートエンジニアリング部長を務める中野仁氏がソリューションの導入経緯や活用方法について詳細に語った。同氏の講演はリアルな経験を踏まえた示唆に富むものだったので、ここで改めてその内容を紹介したい。

導入前の状況

クックパッド コーポレートエンジニアリング部長の中野仁氏
クックパッド コーポレートエンジニアリング部長の中野仁氏

 中野氏によれば、コーポレートエンジニアリング部はいわゆる情報システム部門にあたり、担当範囲はクックパッドのサービス“以外”の社内系システム全般となる。クックパッドは、国内では知名度が高いサービスだが、既に海外にも進出している。現時点で62カ国に進出し、「世界のレシピサービス」になっているという。

 とはいえ、これは情報システム部門から見れば“悪夢のような状況”なのだそうだ。「とりあえず世界に出たけど、どうしようか?」「社員情報データベースはどう整備する?」といった部分があまり考えられていなかったのが実際だった。

 「前提として2016年に経営戦略に大きな変更があった。国内から海外へというのは、国内に集中してビジネスを展開していたのを、海外ビジネスも強化/加速していく形に変えたこと。多角化を止めて本業のレシピサービスに回帰していくということもあった」(中野氏)

 実際の動きは、海外のレシピサービスの買収に始まった。国内事業の統廃合では、多数の子会社を統廃合していったん全てクリアにし、同時に新規事業の立ち上げもドラスティックに行うというものだった。こうした中で、社内システムを根本的に見直さなくてはならなくなってきたという流れがあった。

 こうした取り組みを始める前の課題(ASIS)、そして、どのような姿を目指し(ToBe)、どう実現したのか――。まとめると、ASISは「分散と分断」であり、ToBeは「統合と連携」という感じだ。「分散と分断」という状態を、あるべき姿として「統合と連携」にしていくというのが、社内システムの抜本的な見直しである。

図1
図1

 上の図1は、今回のシステム刷新を実行する前の2015~2016年初頭ごろにおけるクックパッドのシステム概要だ。同氏が入社した頃の状況といい、国内ではメジャーなシステムを組み合わせた構成だった。

 まず問題だったのが、国内とグローバルのシステムが全くつながっていなかった点だという。当時、グローバルではスペインやインドネシア、米国などに大きな拠点があったが、国内とは完全に別のシステムを使っていた。国内は国内で「OBIC 7」などが導入されていたものの、サービスごとにバラバラに使われる状態だった。

社員数が分からない

 中野氏は、これが「深刻な事態」だったと語る。まさにシステムが分散している状態だが、具体的には、バックエンド系システムにおける非常に重要なマスターデータの1つとなる「社員組織マスター」をシステムごとに全てバラバラに持っていた。しかも、何らかのシステムでつないでいるならともかく、全くつないでいなかったという。

 「ウェブサービス系の企業ではよくある話だが、組織変更や会社の買収などある度に、社員が大騒ぎしながらダブルメンテナンスをすることになり、ExcelとCSVファイルが飛び交う状態だった。これは『データの大分散』が起こっている状態で、ひたすらダブルメンテナンスをやり続けるという状況に陥っていた」(中野氏)

 連携(図2)はCSVファイルの交換で行っていたが、少しの変更があると、またそれぞれのシステムを手作業で変更することになり、データの品質という点では、ほぼ信用できないレベルだったという。

 「どのデータが正しい内容なのか、どのデータが本当の『正のマスター』なのか全く信用できない。さらに、システムごとに持つデータの内容が微妙に違っていて、どの情報がマスターなのか、どの情報が最新の状態なのか分からないし、データ自体の品質も低い。ダブルメンテナンスを行っているのでかなり間違っていた」(同)

図2
図2

 最も象徴的だったのは「社員数が分からないこと」だったという。「今日は何人の社員が在籍していて、どこの部署にいて、どういう仕事をしているのか」という問いに対し、「ちょっと待ってください」と、人事部門がExcelを操作し、いろいろなシステムからデータを集めくる。そこで、「これとこれがおかしい」と繰り返し見直すが、毎回微妙に違う結果が返ってきてしまう。「『なぜこれとこれが違うの?』と聞かれて返答に困る、という状況。『社員数とは何か』という“哲学的な問い”に直面したような形だった」と中野氏は振り返る。

 システム部門にとっての問題は、データもプロセスも分散する状況下で、非常に労働集約的な仕事になっていた点だった。まさしく運用に追われて新しいことは何もできない状態だった。また、データ自体がこれだけ不整合な状況にかかわらず、「もうBI(ビジネスインテリジェンス)とか言っている場合ではなかった。元々のデータが信用できないため、BIを導入したところで、間違ったデータソースで間違ったデータを可視化して経営に提供してしまいかねない。さらに、海外事業が動き出しているにも関わらず、国内の情報しか見られないという状況だった」という。

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