シマンテックは11月2日、都内にて同社主催の年次カンファレンス「SymantecVision2006」を開催した。日本で6回目の開催となる今回のイベントのテーマは「PROTECTION: Infrastructure. Information. Interactions. 〜安心できるIT社会の実現に向けて〜」。基調講演には米Symantec 会長 兼 CEOのJohn W. Thompson氏が登場した。
Thompson氏が強調したのは、「オンライン取引の方法や環境は変化した。これに伴い、オンラインでの脅威も多様化している」ということだ。以前はコンシューマーと企業がオンライン取引を行うことはなかったが、今ではコンシューマーも企業インフラを使った取引をしている。こうした中で、個人情報の漏えいや金銭がからむオンライン詐欺なども横行しており、「ユーザーが安心してオンライン取引ができるために、われわれはインフラや情報、そしてオンライン取引そのものを保護しなくてはならない」と、イベントのテーマについて説明した。
「オンライン取引を発展させるためにも、オンラインの信頼性を築くことは重要だ。しかしユーザーの50%以上は十分なプロテクションをしていない」とThompson氏。フィッシングも増加傾向を辿っていることから、同社では10月にオンライン詐欺対策の「Norton Confidential Online Edition」を米国にて発表した。これは、店頭販売やダウンロード販売するタイプのものではなく、「(オンラインバンキングなどにおいて)トランザクションベースでセキュリティを提供するものだ」とThompson氏はいう。将来的には日本での展開も予定されている。
日本での取り組みについて具体的に説明したのは、シマンテック日本法人の代表取締役社長、木村裕之氏だ。木村氏はまず、今後リリース予定の製品について、データセンター向けソリューションでバックアップ機能を拡張することや、次世代エンタープライズクライアントセキュリティソリューションとなる「Hamlet」(開発コード名)の出荷が近いことなどを話した。
また木村氏は、現在世界4カ所に存在する同社のセキュリティオペレーションセンター(SOC)を日本にも設置したいとしている。時期など詳細は未定だが、「日本でのサポートに対する要求は高い」として、SOCの国内設置を具現化させたい考えを示した。
同社のサービス事業は、テクノロジサービスとコンサルティングサービスに分けられるが、まずテクノロジー分野の個人向けサービスについて木村氏は、「すでに月額課金制のセキュリティ対策サービスを提供しているが、来年以降はオンラインバックアップサービスを提供する予定だ」としている。また、ソフトバンクモバイルの端末にセキュリティ保護ソリューションを提供し始めたことについては、「2007年3月までは無償でダウンロードできる」としている。
法人向けのサービスは、企業のクライアントPCを遠隔から運用監視するオペレーションサービスに加え、今後企業全体のITの運用管理を行うマネージドセキュリティサービスの展開も予定している。
コンサルティングサービスでは、業界別に特化したサービスとして「Symantec IndustryCURE」を11月1日に発表したばかり。まずは要望の多かった金融業界向けの「FinanceCURE」を12月より提供開始するが、今後情報通信事業者向けの「TelecomCURE」、電力、ガス事業者向けの「Power&EnergyCURE」、行政サービス向けの「GovernmentCURE」を準備する予定だ。
IndustryCUREは、日本発のサービスだ。グローバル展開はあるのかとの問いにThompson氏は「日本特有のニーズに応えたサービスのためグローバル展開の予定はないが、世界でも適用できる部分はある。また、こうしたサービスを反映した製品も考えたい」した。
シマンテックが注力するセキュリティとアベイラビリティ分野は、多くの企業が参入しようとする分野でもあり、Microsoftでさえもセキュリティ分野への参入を視野に入れている。Microsoftと競合して価格競争が起こる可能性もあるが、Thompson氏は「これまでにも無料のセキュリティ対策ソフトは存在したが、Symantec製品の価格が下がることはなかった。それは、やはりユーザーがわが社のブランドと品質を認めていたからだ。Microsoftが市場参入しても、製品の価格が下がることはない」と述べた。