Oracleが、企業のソフトウェアアプリケーション間でやり取りされる機密性の高いデータを保護する、新たな技術標準を提案した。だが、情報漏えいは実際にそうした場所から起こるのだろうか。
「Identity Governance Framework(IGF)」と呼ばれる同標準は、企業がビジネスアプリケーション間で情報のやり取りをする際に、そのプライバシーおよびセキュリティを管理することを可能にするためのものだ。Oracleが米国時間11月29日に発表したIGFに関する声明によれば、クレジットカード情報や社会保障番号などの個人データを守るのに役立つという。
Oracleの開発、セキュリティおよびアイデンティティ管理部門担当バイスプレジデントAmit Jasuja氏は、「多くのデータセキュリティ侵害が起こっている。ID情報が企業内のあらゆる場所に分散していることが原因だ。厳重に管理すべきID情報があることを知りもしない人が大多数を占めている」と話した。
銀行口座情報など機密性の高いデータを所有している企業は、IGFを採用することで、アプリケーションがID属性を扱う方法をコントロールできるようになる。ID属性とは、顧客やパートナーの名前、住所、銀行口座番号といった情報を指し、顧客サービス、給与支払、製造関連のプログラムなどがこうした情報を取り扱っている可能性がある。IGF標準は、European Data Protection Initiativeや米国企業改革法(Sarbanes-Oxley Act:SOX法)、Gramm-Leach-Bliley法をはじめとする規制の基準に対する法令遵守にも役立つと、Oracleは説明している。
OracleはIGFを独自に開発したが、CA、Layer 7 Technologies、Novell、Ping Identity、Securent、Sun Microsystemsの支援も取り付けている。これらの企業は、標準仕様の完成版を策定することに向けて協力する予定だという。
しかし、Forrester ResearchのアナリストJonathan Penn氏は、こうした提案によって問題の本質が解決することはないと指摘している。重要な個人情報の使用に対する視認性は上がるものの、メリットはそれだけだというのだ。
「十分な見返りが得られないものに、十分すぎる力を注ぎ込んでいるように見える。Oracleが提案しているのは、アプリケーション間のアーキテクチャだ。CRM(Customer Relationship Management)システムを悪用し、顧客の個人データにアクセスするなどといった行為を防ぐのには、何の効力も持たない」(Penn氏)
さらにPenn氏は、たとえ今回の取り組みが、アプリケーションによるデータの使用状況を明確にする標準的な方法の確立につながったとしても、SAPやIBM、Microsoftといった大手企業が参加していない現状には「問題がある」と話した。
Penn氏によると、Oracleの提案には、Microsoftが公式な支援を表明していないLiberty Allianceや、承認および認証データを交換する標準規格SAML(Security Assertion Markup Language)に偏った傾向が認められるため、同社がIGFをサポートする見込みも薄いのだという。同氏はまた、IBMは、Oracleが提案している標準とほぼ同様の働きをする「Tivoli Privacy Manager」ツールを所有していると付け加えた。