IPAオープンソースソフトウェア・センター(OSSセンター)は4月25日、2006年度に実施した自治体におけるOSSの導入実証実験に関する成果を発表した。
IPA OSSセンターでは、OSSデスクトップを自治体の実務現場に導入する実証実験を2005年度より実施している。
発表に先立ち、OSSセンター長の田代秀一氏は、2005年度の導入実証で残された課題について「OSSデスクトップと既存の基盤システムとの相互運用性の低さ」「地元中小ITベンダーの参入を促進できるシステム構築手法の確立」「低コストで継続的なサポート手法の必要性」「OpenOffice.org等の個々のOSSのさらなる機能強化、性能向上」「プリンタをはじめとする周辺装置について既存環境との共存などを実現する運用機能の強化」「外字や機種依存文字などのフォント、文字コードの管理機能、処理能力の強化」などを挙げた。2006年度においては、これらの課題を解決するためのテーマを中心とした実証実験が行われてきたという。
田代氏は、2007年3月に総務省によって最終版が公開された「情報システムに係る政府調達の基本指針」を取り上げ、その中に「オープンな標準の採用」が挙げられている点に言及。「OSSはオープン標準のバリュードライバーである」とし、特定ベンダーのプラットフォームに依存しないオープンスタンダードとしてのOSS活用と、その促進を目指した実証実験の意義を訴えた。
報告は、大きく関連事業概況と実証実験報告とに分かれ、実証実験の報告ではSRA東北が手がけた山形県庁の文書管理システム、NECが手がけた栃木県二宮町および周辺視聴におけるOSSデスクトップの導入と広域連携基盤の整備、NTTPCコミュニケーションズによる市川市での公共施設予約システム、ハイパーネットワーク社会研究所による大分県庁基盤システムなどの事例が報告された。
なお、各報告の詳細については、追ってレポートを掲載する予定だ。
「OSS iPedia」がリニューアル--複数の新サービスも計画
加えてIPAでは、2006年5月に公開されたオープンソース情報データベース「OSS iPedia」を4月25日にリニューアルしたことを発表した。トップ画面のナビゲーション、検索画面でのユーザーインターフェースが改良されたほか、トップ画面と導入事例情報、性能評価情報が英語化され、海外の利用者によるiPediaの活用が容易になったという。今後は、iPediaへのコンテンツ登録をしやすくするとともに、情報登録の促進活動にも注力し、情報の拡充を図っていくとしている。
また、現在、OSS iPedia以外に「OSSオープンラボ」「HelpPCプロジェクト」と呼ばれる2つの新サービスを開発中という。
OSSオープンラボは、OSSを用いたソフトウェアにおける脆弱性や構造をチェックする一連のツール群を遠隔利用できる形でラインアップした「ツールライブラリ」と、各種のOSSを遠隔から試用できる「ソフトウェアショーケース」から構成される。OSSに携わる開発者がこれらのツールを利用することで、OSSの品質向上、活用促進を図るという。
もうひとつのHelpPCプロジェクトは、各種のLinuxディストリビューションやデバイスドライバがどのようなハードウェア環境で動作するのか、ライセンスやサポートの形態がどうなっているのかといった情報をデータベース化し、Linuxを利用したいユーザーに対して、最適なディストリビューションやその入手方法を提示するもの。ユーザーは、専用のアプリケーションを実行することで、ハードウェア環境に関する情報収集を自動化できるという。
各サービスは、2007年後半から2008年3月までの期間に、順次提供される予定。