PLAYSTATION3やXBOX360、そしてWiiなどのゲーム機が市場に登場し、消費者の評価もある程度明らかになってきた。一方で、それらのプラットフォームに対してコンテンツである「ゲームソフト」を供給するゲームデベロッパーは新たな課題に直面しつつある。ハードウェアスペックの向上によって、開発現場で扱うべきデータの量は増大し、その管理も複雑さを増しているのだ。
かつてのAliasを傘下におさめ、現在「Maya」と「3ds Max」というゲーム開発の現場で標準的な2つの3Dグラフィックツールを扱うこととなったAutodeskでは、こうした課題の解決に最優先で取り組んでいるという。
オートデスク メディア&エンターテインメントで、シニアゲームインダストリーマネージャーを務めるMichel Kripalani氏と、同じくプロダクトマネージメント(3D)シニアディレクターを務めるMichel Besner氏に、同社ツールのメリットや、ツールベンダーから見た現在のゲーム市場について話を聞いた。
--現在、オートデスク メディア&エンターテインメントが扱う3Dツールとして、大きく「Maya」と「3ds Max」という2製品があります。これらの現在の状況を教えてください。
Kripalani 2006年1月にAliasを買収しAutodeskの製品となった「Maya」については、バージョン8.5が初の日本語版として2007年4月にリリースされました。また、もうひとつの製品である「3ds Max」は、特に欧米での影響力が強い製品で、現在バージョン9です。
重要なのは、いずれの製品も市場で大きな成功を収めており、それぞれのビジネス戦略は、それぞれに成功しているという点です。現在、両製品は、ユーザーの好みやワークフローのありかたなどによって選択されています。
Autodeskでは、各ツールで作り出したアセットが、互いのツールを自在に行き来できる環境を作り、相互の接続性を高めていくことを目指しています。
--それぞれのツールの実際の適用事例を教えてください。
Kripalani それは答えるのが大変な質問です。なぜなら、PCやゲームコンソールを問わず、世界で流通している大半の3Dゲームは、Autodeskのツールを使って作られているからです。日本の主な開発スタジオも、ほとんどが弊社のツールを使っています。
最近、これらのスタジオに新たに導入されたのは「MotionBuilder」と呼ばれるツールです。これは、大規模な3Dリアルタイムアニメーション制作における効率性を高めるためのスタンドアロンの製品ですが、Mayaや3ds Maxなどのツールと補完し合うことができます。すでにエレクトロニック・アーツ(EA)やソニーをはじめとする主要なゲームデベロッパーに導入されており、実際のゲーム制作に使われています。
またAutodeskでは、ツールと同じテクノロジーを、実際のゲームのエンジンにも使うことが重要だと考えています。そのため、「Autodesk HumanIK」と呼ばれるミドルウェアをデベロッパーにライセンスしています。EAでは、HumanIKのライセンス供与を受けており、同社製の多くのゲームに、このミドルウェアが使われています。
--ゲームコンソールの機能が向上するのに伴い、ゲームの開発もより大規模になっているという話を聞きます。そうした変化によって、開発ツールに求められる性能はどのように変化しているのでしょうか。また、それに対して、Autodeskはどのような対応をしていますか。
Kripalani 2つの答えがあります。
ひとつは、Autodeskでは、ハードメーカーをはじめとする主要なゲーム開発を行っているベンダーと緊密なやり取りをしながら、最新のコンソールに対する理解を深め、われわれのツールを使う開発者が、アセットを作る上で最新のプラットフォームに対応できるようにしています。
もうひとつは、われわれは「作業の効率性を高める」ツールの提供にフォーカスしています。ワークフローの効率性を改善し、アーティストが同じ時間で、より多く、より質の高いアセットを作り出せることを念頭に置いています。
確かに、前の世代の開発者にとっては、2Dから3D開発への移行やネットワーク接続への対応といったことが課題でした。今の世代の開発者は、扱うべきデータ量の増加や複雑さといった課題に直面しています。われわれは、これらについて克服すべき大きな挑戦であると考えており、そのためのツール開発にリソースを投入しています。
Besner その点で、Autodeskには、他のツールベンダーにはないユニークな強みがあります。それは、これまでも非常に規模の大きなユーザーにおけるプロジェクト管理を助けてきた経験とノウハウが蓄積されている点です。また会社として、橋梁、高層ビルの建設、建築、製造、設計といった分野でのツール開発、運用サポートのノウハウもあります。そこで培われた知識と経験は、今後、ゲーム制作にも生かせる部分が多くあります。