マイクロソフト、日本市場にERP製品を投入--奉行シリーズのOBCとも「良きパートナー」 - (page 2)

藤本京子(編集部)

2007-06-20 19:37

 Microsoftでは、3月に米国やカナダ、ドイツなどのパートナーに向け、他社製品からAXへのマイグレーションツールを提供開始している。マイグレーションの対象としているのは、「買収された製品などで今後のバージョンアップの見通しが立っていないものや、長期間バージョンアップされていない“メンテナンスモード”に入った製品」とMcKee氏。この中にはOracleが買収したJ.D. Edwardsの製品も含まれる。日本語版には対応していないが、「日本でもメンテナンスモードに入った製品があれば、顧客のニーズを見た上でマイグレーションツールを提供したい」(McKee氏)としている。

 AXは、パートナー企業を通じて販売されるが、パートナーの中には、「奉行シリーズ」で知られるオービックビジネスコンサルタント(OBC)など、自社でERP製品を抱える企業も数多く名を連ねている。こうした企業がマイクロソフト製のERPを販売することについてMcKee氏は「ターゲットとする市場が違うため、彼らにとっても市場が広がることになる」と話す。またMcKee氏は、OBCがAXの給与システムのプラグインなどを提供していることにも触れ、良きパートナー関係を築いていることをアピールした。

 実はAXそのものは、Microsoftが2002年に買収したNavisionの抱える「Axapta」というERP製品がベースとなっている。日本市場に参入するには、日本で成功している国産ERPベンダーを買収するという方法もあるが、この点についてMcKee氏は「どうしても必要な機能などがある場合は買収を考えるかもしれないが、今の戦略ではすでにある製品をローカルニーズにあわせて拡張することにリソースを注ぎたい」としている。また、Microsoft エマージングマーケット MBSインターナショナル担当ディレクターのLars Plesner Hamann氏も「買収後の製品サポートなどを考えると、すでに製品を抱えているわれわれとしてはその製品を拡張していく方がずっといい。同じような製品を数多くそろえてもあまり意味がない」と話す。

 AX 4.0は、2007年夏にはSP2が提供され、2007年第4四半期には機能拡張が行われる。また、2008年後半には5.0が、2010年には6.0が提供される予定だ。「2年ごとにバージョンアップし、その間サービスパックや機能拡張を行う」とMcKee氏。さらに、海外ではすでに進んでいる業務別や業界別ソリューションを国内でも今後積極的に展開する。こうしたソリューションは、パートナーが中心となって開発し、マイクロソフトにOEM提供した上でDynamicsパッケージとして販売する。

 マイクロソフトは、2007年後半にも一部の国でDynamics CRMをSaaS(Software as a Service)で提供するとしているが、ERPのAXについては「完全なSaaSモデルで提供する予定はない」(McKee氏)としている。「米国ではパートナーがAXをホスティングサービスで提供しているケースもあるが、『Live CRM』のようにマイクロソフトが完全にホスティングするようなサービスはAXでは予定していない」とMcKee氏。それは、ERPではカスタマイズが多く、ホスティングサービスで個別ニーズに対応することが困難なためだ。

 「CRMをSaaSモデルで提供することは、ニーズも高かった。しかしERPはあまりSaaSに向かない。カスタマイズの必要がないパッケージ製品などはサービスとして提供しても問題ないが、ERPはカスタマイズありきの製品。一部の機能をサービスとして提供することはあるかもしれないが、ERPシステム全体をSaaSで提供することはないだろう」(McKee氏)

Dynamics AX MicrosoftのJeff McKee氏(左)と、Lars Plesner Hamann氏(右)

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