商用利用でもライセンス料がいらないFirebird
MySQLは改めて言うまでもなく、そのライセンス体系は、GNU GPLと商用ライセンスのデュアルだ。そのために、MySQLを組み込んだアプリケーションを開発して販売する際には、MySQLを保持するスウェーデン企業「MySQL AB」にライセンス料を支払う必要がある。
こうしたことから「たとえば特定業務向けにRDBMSを組み込んだアプリケーションを開発・販売するとします。その特定業務でかなりのシェアをとっても、それほど本数がでないものに対してMySQLを使ってライセンス料を払うのは厳しい」(同氏)のである。なお、Firebirdのライセンス体系は、Mozilla Public License(MPL)を改版したInterBase Public License(IPL)だが、商用利用であってもライセンス料は必要ない。
一方のPostgreSQLのライセンス体系は、OSSで愛用されているBerkeley Software Distribution License(BSD License)であり、MySQLよりは商用化しやすい。しかし、PostgreSQLは「どうしても“敷居が高い”」(同氏)。
PostgreSQLは、エンタープライズ向けの機能や柔軟性は高いが、その分、気軽に始めるには敷居が高くなっている。インストール手順は複雑だし、インストール後にそれなりに動作させるためのチューニングは必要だ。小規模のウェブシステムでデータベースとして使ったり、特定業務用のWindowsアプリケーションに組み込むにはいささが大げさすぎる。
ワークグループレベルのデータベースに最適
もちろん、Firebirdがどんな用途にでも対応できるわけではない。大規模なウェブサイトなどには、MySQLやPostgreSQLの方が最適だ。これは木村氏も認めている。
「小〜中規模なDBであれば、ライセンス料がかからなくて、メンテナンス工数が少ないFirebirdの方が合っている。しかし、データもユーザーもどんどん拡張して、工数をかけつつ頻繁にスケールアウトする必要があるようなシステムにはMySQLやPostgreSQLのほうが合っている。使いたい用途に合ったRDBMSを選択するべきだと思っています。つまり適材適所です」(同氏)
木村氏の言葉を証明するように、Firebirdを組み込んだアプリケーションを開発・販売する企業や団体が登場してきている。ソフト開発のアペックスでは、この5月から、分譲マンションのアフターサービス補修工事向け管理システム「AS Web」をASP形式で提供しており、このシステムにはFirebirdが使われている(関連記事・Firebird搭載の分譲マンションのアフターサービス管理システムがASPで提供)。
アペックスのほかにも、モイネットやオーエスエスブロードネット、日本医師会の研究開発プロジェクト「ORCAプロジェクト」なども、開発したアプリケーションにはFirebirdが組み込まれている。これらのソフト開発企業は、この4月に日本で初めて開催されたFirebirdのイベント「1st Firebird Japan Conference」において、Firebirdを選択したメリットとして「DBが壊れることがない」「本格的にトランザクションを使えるのが便利」などを挙げている(関連記事・“火の鳥”が舞う--Firebirdが日本で初めてのイベントを開催)。