SAS Instituteは、米国ノースキャロライナの本社にて世界各国の報道関係者を集めたメディア向けセッションを開催した。SASはFortune誌の「Best Companies to Work For」で常に上位にランキングされる企業。同社CEOのJim Goodnight氏は、「毎年5万5000通もの履歴書が送られてくる。つまり、さまざまな才能を持った人たちの中から採用できるということだ」と、人気企業であることの利点を述べた。
優れた人材から生み出したSASの2006年の収益は19億ドルで、前年比12%の伸び率を達成した。業界別の内訳では、金融業界の売上が全体の40.3%と最大で、次いで政府関係が14.4%、メーカーが10.9%と続く。だが、Goodnight氏によると、小売業からの売上比率は、現段階では3.9%と低いものの、「一番伸びている業界だ」という。
ソリューション別に見ると、SASにとって最大のビジネスはデータインテグレーション分野で、全体の50%を占めている。次に大きい分野はハイエンドアナリティクスで全体の20%を占める。BIベンダーとしての知名度が高いSASだが、BI分野でのビジネスはそれほど大きいわけではない。
SASでシニアバイスプレジデント 兼 最高マーケティング責任者を務めるJim Davis氏は、「われわれは純粋なBIベンダーではない。BIというのは、クエリやレポーティングが中心のツールだ。SASはこういったツールベンダーからは卒業し、ソリューションプロバイダへと変わった」と説明する。
事実、IDCが発表したレポート「Worldwide Business Analytics Software 2006 Vendor Shares and 2007-2011 Forecast」によると、2006年のSASのビジネスアナリティクス分野におけるソフトウェアの売上高は前年比14%増の15億9000万ドルで、ビジネスアナリティクスベンダー上位4社の中では最高となった。この分野における同社のシェアは、Oracleに次いで2位となっている。
SASでは業界別ソリューションを提供することに注力していることも特徴だ。それが「BIツールベンダーではない」ことを証明していることにもつながるが、同社にとっての競合はどこなのだろうか。Davis氏は、「単独の競合企業はいない。例えばキャンペーンマネジメントであればUnicaと競合することがあるし、クレジットカード会社向けであればFair Isaacなど、さまざまな競合がいる。ただし、SASほど業界別ソリューションが豊富な企業はほかにないだろう」と話す。
設立以来30年間連続で増収増益を果たしているSASだが、株式公開はしておらず、今後もその予定はないという。その理由についてDavis氏は、「株式公開には良い面よりも悪い面の方が多い。公開すれば買収のターゲットとなりやすい。また、ウォール街とソフトウェア企業の相性はあまりいいとは言えない。株式を公開すれば四半期ごとに業績をレポートしなくてはならないが、ソフトウェアは四半期という周期で片付くものではないからだ。こうした四半期ベースのプレッシャーは、イノベーションを妨げるものでしかない」と語った。