モノづくりの精神でソフトウェアのブランドを作る
その梅田氏は日本のソフト市場をどのように見ているのだろうか。
「残念ながら国際競争力という点では劣っていて、OSやミドルウェアの階層では負けているといわざるを得ません、しかし、アプリケーションのレベルでは決して負けてはいないと思っています。特に使い勝手と品質については日本が上です。当社のObject Browserについても、顧客満足度調査などでは高い評価をいただいています。ですから私は、ソフトウェア業をサービス業として見るのではなく、日本の強い製造業、つまりモノづくりの視点から巻き返しを図るべきだと思うのです」
現在の日本のソフトウェア業界は、かつての日本の家電、自動車の業界に似ているという。現在でこそ世界を席巻しているこうした業界も、かつては欧米のメーカーの後塵を拝していた。しかしその業界を現在のような位置に押し上げたのは、使い勝手や品質へのこだわりだった。
ソフトウェア業も、こうしたモノづくりの視点で回生を図るべきだというのが梅田氏の考えだ。そしてそれこそがMIJS設立の背景であり、同社がこのMIJSに参画した最大の理由だった。
「たとえば、日本の車は故障しないとか、安くて性能がよいとか一定の評価がありますね。それと同じで、日本のソフトウェアについても使い勝手がよいとか品質がよいとか、ブランドを作っていく必要があると思います。たとえば、イスラエル製のソフトというのはある確かな評価があります。それと同じように、日本のソフトというだけで世界中が認めてくれるようなブランドを作っていきたいと思っています」
同社はすでにObject Browserの中国語版を開発し、パイロット的に出荷を始めている。その海外展開の手法はエンジニアの評価、口コミで使い勝手の良さを伝え、トライアル版で実際に使ってもらうというもの。そして、まずは中国に進出している日系企業をターゲットにするという。これが、海外進出の常道だという。
「海外のソフトが日本に入ってきたときも、やはり外資系企業から広まりましたね。逆もまた真なりです。MIJSは販売を請け負う組織ではなく、あくまでも海外進出のためのマーケティング調査や活動拠点の提供、情報共有の場だと位置づけられています。MIJSのプラットフォームを利用しながら、自社の戦略とリスクで展開しようと思っています」
SaaSはソフトウェアの巨大なモール
このように、日本のソフト業の海外進出への意欲がMIJS設立のきっかけとなったことは確か。しかし、その設立に集まった会社の中には「うちの会社はまだ海外よりも国内だ」というところもあった。そこで、MIJSは海外進出に加えて製品連携の2本柱でスタートした。実は、梅田氏はその製品連携を推進する技術部会の部会長も務めている。