ステップ1:貴社にとって買収が理にかなっているか否かを判断する
目的:貴社の方向性を明確化し、買収を貴社の戦略にどのように適合させるか
M&Aは単なる企業活動ではない。成長のための戦略である。企業が別の企業の買収を決断するということは、ゆっくりとした有機的な成長のプロセスよりも買収の方が効果的な企業拡大の方法であると結論づけることである。それゆえ企業合併の推進力は貴社の全体的な企業戦略から自然に出てくるものであるべきだ。
残念ながら、それが常に当てはまるとは限らない。ときには、合併や買収のアイデアが突然わいてくることもある。ある競合他社は今年の業績が不振だ、それなら安い価格で買収してしまったらどうだろうか。社内であるプロジェクトが失敗した、それなら似たような製品を販売している新興企業を買収してしまったらどうだろうか、など。Edward Weiss氏によると、このような買収はほぼ例外なく失敗するという。Weiss氏はGroup 1 Softwareが数社の企業を買収してのちにPitney Bowesに買収されたときに法律顧問を務めていた。「戦略なき買収は衝動買いのようなものだ」とWeiss氏は言う。「結局、必要のないものを買ってしまう結果に陥るのが常である」
それゆえに明確な企業戦略が必要なのだ。それによって、たとえ非常に魅力的に見える案件であっても、企業戦略を前進するためにプラスにならない取引をすべて排除することができる。「成長自体が目的になってはいけない。重要なことは発展力のある企業を構築することである」とWeiss氏は指摘する。
基本事項
M&A活動を支える戦略的な戦術
どんな企業戦略にも別の企業を買収するための5つの戦術的な理由が存在する。ほとんどの買収案件はこれら5つの理由の1つまたはそれ以上を組み合わせている。
戦術 | 事例 | 成功する場合の理由 | 失敗する可能性 |
---|---|---|---|
市場占有率を迅速に成長させる | Synovusは米国南東部の数十行の金融機関を買収して40億ドルの持ち株会社になった。 | 企業買収では有機的な成長よりも迅速に財務基盤を構築できる。 | 買収が失敗した場合、売上高と利益が急速に干上がってしまう。 |
手元現金をより有効に活用する | Microsoftは90年代後半に多額の現金を持っていたので、投資家がその一部を企業買収に使うように要求した。 | 投資家は、金融市場の口座に寝かせてある現金は資本の無駄遣いだと考える。 | 投資家が増配または自社株買いを求めるかもしれない。 |
現在の顧客により多くの製品を提供する | 企業のネットワーク用ハードウェア市場を支配していたCiscoはLinksysを買収して家庭用ネットワーク市場に参入した。 | 買収した企業が自社の現行製品を補完するものである場合、全体が部分の合計よりも大きくなる可能性がある。 | その製品が市場で実証済みでない場合、誰も買いたがらない製品が手元に残ってしまう可能性がある。 |
得難い有能な人材を確保する | IBMはPricewaterhouseCoopersを買収して、大多数の経営コンサルタントと技術コンサルタントを獲得した。 | 人材を1回の買収で一気に確保してしまう方が、何度も就職説明会を開催するよりも簡単な場合がある。 | 買収された企業の従業員が新しい環境になじめず、人材が流出する結果になるかもしれない。 |
新しい市場に進出する | ソニーはColumbia Pictures Entertainmentを買収して、一夜にして家電業界の巨人でありながらメディア業界の巨人にもなった。 | 買収によって新事業をゼロから構築することなく新しい市場に即座に参入できる。 | 複数の市場に手を出した結果、どれか1つの事業に集中して成功に導くことが困難になることがある。 |
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ