IP網上でのビデオ会議を想定した標準化がきっかけ
ビジュアルコミュニケーションは、遠隔地の人と顔を見て話すという発想と、その同質感や臨場感をもとめて進化してきた。その発想は古く、1914年に出された児童向けの本にも見られる。この進化の歴史には、欧米の開発者や研究者だけではなく、日本人も数多く関わり、映像や音声技術、アイコンタクトまでさまざまな研究及び製品開発が行われてきた。
米国では、1930年に人間よりも大きなテレビ電話装置の実験や、1960年頃には時の万国博覧会でテレビ電話の展示が行われ大きく話題になった。日本でも1972年の万博でテレビ電話が紹介されたという。さらに1970年代には日本のメーカーがビジネス向けのビデオ会議システムを世界で初めて製品化したと言われている。
1980年代にはビデオ会議装置が一部の大企業などで導入されたが、大きな広がりにはならなかった。その理由は装置自体が大がかりであることと、高価な専用回線が必要だったからだ。また映像や音声も今ほど十分ではなかったし、他社製品との通信も難しかった。
そこで1990年業界にとって転機が訪れる。ISDN回線でビデオ会議を行うための通信プロトコルが「H.320」という形で標準化が行われたのである。
その後、会議装置は、H.320を標準に準拠した多数の製品が市場に投入された。と同時に、Windows 3.1/95の出現は、机上でも使用できるPC向けISDNビデオ会議システムを生み、ビデオ会議製品は会議室からデスクトップへとその可能性を広げた。
そして、ISDNが主流だったビデオ会議の世界を変えたのは、1990年代後半のインターネットの普及だ。それはIP網上でのビデオ会議を想定した標準化(1996年に通信プロトコル「H.323」が制定された)のきっかけとなり、メーカーはこぞってIP網への対応を進める結果となった。
当初は、ISDN標準搭載のIPオプションが主流だったが、2000年頃以降IP標準機が出てきてIP搭載が本格的に動き出した。最近は、H.323に加えて、IP電話(VoIP)対応の通信プロトコルである「SIP」を搭載するシステムも増えてきた。
ユニファイド、テレプレゼンス、HD
その間、もう一方のウェブ会議システムは、ネットの普及で大きく注目される技術となった。その技術的な源流は、1970年頃以降開発された「テレライター」や「オーディオグラフィック」、「電子黒板」などにある。テレライターは、コンピュータと入力装置、そして電話モデムを組み合わせ、1200〜9600bpsの通信速度で接続し、画面に入力した文字などを複数拠点間で共有する電子システムだった。