セキュリティのゼネラリスト目指せ--暗号研究の第一人者が語る人材像

小山安博 冨田秀継(編集部) 2008年03月11日 12時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 インターネット、Eメール、携帯電話、電子マネー──いまや誰もが利用するITツールには共通した必須の技術がある。もはやこれがなくては社会自体が成り立たないともいえる技術だが、それが何か分かるだろうか?

 それは「暗号」だ。データを暗号化することで安全に、安心してデータをやりとりすることができるこの技術は、社会を支える重要なインフラとなっている。その暗号の現状と今後の動向、また求められる人材について、暗号の世界で第一人者である三菱電機情報技術総合研究所 情報セキュリティ技術部長の松井充氏に話を聞いた。なお、松井氏は2007年度文部科学省「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」に採択された「研究と実務融合による高度情報セキュリティ人材育成プログラム(通称:ISSスクエア)」に連携企業代表として参画、人材育成にも積極的に関わっている。

暗号と無償化

 松井氏は、1994年に当時の米国標準暗号だったDESを世界で初めて解読し、新しい暗号アルゴリズム「MISTY」を開発したことで知られる、国内きっての暗号研究者だ。MISTYは世界中で使われているGSM、W-CDMA方式の携帯電話に搭載されている暗号アルゴリズム「KASUMI」のベースにもなっている。

 松井氏らが開発したMISTYは、1995年に「MISTY1」が発表され、12年近くたった今でも破られていない強固な暗号技術。98年には基本特許が無償化され、その後利用が拡大している。

 卑近な言い方をすれば「タダで食っていけるのか」という点が気になるが、松井氏は「暗号は特殊な世界」と話す。IT技術は基本部分が特許で守られている場合が多いが、暗号は「無償でないと使ってもらえない」(松井氏)というのだ。これは、米国が政府の標準暗号を無償化したことと、自由と無償をスタンスとしていた米西海岸の技術者たち、そして彼らもその発足に多大な役割を担ったインターネットでの利用で暗号が広まったことが原因だという。広く使われている携帯電話でも無償が前提となっているそうだ。

 こうした背景がある中で、「暗号技術は付加価値」と松井氏は語る。暗号を単体で購入するのは一部のメーカーに限られており、多くの企業は強固な暗号機能が携帯電話や通信機器といった製品の価値を高めるものと判断しているからだ。三菱電機側にとっては、携帯電話の世界標準となり、暗号に強いメーカーとしての認知が高まったなどのメリットがあるため、「無償にしても元が取れる」(同)そうだ。ネットのオープン化と企業の利益が相反しない、示唆に富んだ例とも言えるだろう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連キーワード
セキュリティ

関連ホワイトペーパー

SpecialPR

連載

CIO
ハードから読み解くITトレンド放談
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
研究現場から見たAI
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
内製化とユーザー体験の関係
米ZDNet編集長Larryの独り言
今週の明言
「プロジェクトマネジメント」の解き方
田中克己「2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
Fintechの正体
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
情報通信技術の新しい使い方
三国大洋のスクラップブック
大河原克行のエンプラ徒然
コミュニケーション
情報系システム最適化
モバイル
通信のゆくえを追う
セキュリティ
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
セキュリティの論点
ネットワークセキュリティ
スペシャル
Gartner Symposium
企業決算
ソフトウェア開発パラダイムの進化
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
CSIRT座談会--バンダイナムコや大成建設、DeNAに聞く
創造的破壊を--次世代SIer座談会
「SD-WAN」の現在
展望2017
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell EMC World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
さとうなおきの「週刊Azureなう」
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
中国ビジネス四方山話
より賢く活用するためのOSS最新動向
「Windows 10」法人導入の手引き
Windows Server 2003サポート終了へ秒読み
米株式動向
実践ビッグデータ
日本株展望
ベトナムでビジネス
アジアのIT
10の事情
エンタープライズトレンド
クラウドと仮想化