環境に対する意識の高まりを受け、一躍注目を浴びるグリーンIT。エネルギー効率の高いデータセンターは、環境の保護だけでなく、実は、企業が競争力を保ち、効率よくビジネスを運営することへとつながっている。エネルギー効率の向上を模索するデータセンターの今を2回に分けて、レポートする。今回はその後編(前編はこちら)。
SymantecのデータセンターのエキスパートであるDan Azevedo氏は「冷却しやすくするために、発熱量の低い列と発熱量の高い列ができるようにラックを配置する(発熱量が高いラックを集中的に冷却する)」ことにより、冷却効率が高まるとアドバイスする。さらに、Azevedo氏は、熱を分散させるだけではなく、「隣接するオフィスエリアで余った熱を再利用したり、気候によっては外気を利用してデータセンターを冷却する」ことを勧めている。
電力消費量の点からすると、サーバの利用率は問題のごく一部でしかなく、データセンターで消費される電力そのものの利用率という別の問題も存在する。
Green Gridが作成したホワイトペーパーによると、サーバに供給された電力のうち35%が電力変換で失われているという。この数字を仮想化技術を用いていないデータセンターに当てはめてみると、データセンターに供給される電力のほとんどが有効に機能していないことになる。「主要マイクロプロセッサメーカーの研究によると、ITデータセンターでは、低負荷(プラットフォーム利用率が0〜25%)のとき、コンピュータシステムそのものが使用する電力よりも、電力変換と冷却に使用する電力の方が多い」(Green Grid)
電力変換の無駄を減らす1つの選択肢として、高効率の電源を使用する方法が挙げられる。Green Gridは、現在、データセンターで使用されている典型的な電源の効率は65〜70%であるが、現在、効率が最大90%の電源も入手可能であるとしている。
よりエネルギー効率の高い電源であれば、多くの場合、IT製品のライフタイム全体を通して考えると元が取れるが、ITマネージャーはそうした製品にあまり投資しようとしないとGreen Gridは指摘する。これは、ITマネージャーが製品を購入する際、電力の節約という表面にあまり現れることのない要素を考慮せず、多くの場合においてデータセンターに関連して生じる電力コストをまったく意識していないことが理由である。Green Gridは、明確な測定指標が欠如していると考えている。
また一方で、電力コストと電源装置に対する意識の高まりは、別の興味深い新たな状況、具体的にはデータセンターのグローバリゼーションにつながっている。
電力ができるだけ安く、クリーンな場所にデータセンターを移す動きはこれまでにもあった。SymantecのグリーンITスペシャリストのJose Iglesias氏は、米国では、多くのデータセンターがサンフランシスコ地域から、水力発電による安くてクリーンな電力が手に入る北米の太平洋岸北西部に移ったと語っている。
こうした動きは、最も高速な演算処理が可能なところではなく、エネルギーコストが最も低いところに処理負荷を移動させるという、高効率クラウドコンピューティング市場がグローバル化することにつながる可能性がある。ただし、より効率的なデータセンターにデータを移動することによるグローバルな競争は、まだ帯域幅のレベルに限定されていると、Iglesias氏は語る。