マティーニに隠された意味
Casino Royaleでは、もう1つ面白いシーンがありました。皆さんご存知ですよね、Sean Conneryを代表とするJames Bondのバーでの決め台詞。
- Vodka Martini. Shaken, NOT stirred.
Shakeは文字通り「シェイク」、Stirは「かき混ぜる」です。つまり、「ウォッカマティーニ、混ぜないでシェイクしてくれ」ですね。
ところが、00のコードネームを持って間もないBondには余裕がありません。カジノで窮地に追い込まれた彼は、気を落ち着かせるためにマティーニをオーダーします。
--Vodka Martini !!
バーテンダーが、丁寧にこう切り替えしてきます。
--Shaken or stirred?
それに対して余裕のないBondはこう答えます。
--Do I look like I give a damn?(知るか!)
普段Oxford Englishを話すBondがこんな汚い言葉を返してきます。ここで、いかに彼が焦っているかを知る訳です。
ちなみにカクテルの王様と呼ばれるMartiniは、通常GinとVermutをStirします。Ginを多めに入れたものがDry Martiniです。つまり、通常Ginを入れるところにVodkaを入れ、StirするところをShakeするのがCoolなわけです。原作のCasino Royaleに出てくるMartiniは、恋人Vesperの名前にちなんで「Vesper」や「Vesper Martini」と呼ばれています。
私は過去に英国人ばかりのプロジェクトに入ったことがありますが(日本人は私1人)、彼らはマティーニの話が大好きです。どのレシピが王道だとか、通だとか、よくもまあマティーニだけで盛り上がるなと閉口したことがありました。マティーニについて論争をする人達のことを「Snob」と言います。Snobは通常、知識を鼻にかける人のことをさしますが、マティーニ論争におけるSnobはステータスです。彼らに言わせれば、「Japanese cannot be a "snob"」だそうです。そこで私は「日本人も日本酒について語るんだよ」と話すと、興味深そうにしていました。
映画ひとつでいろんなことが学べることが少し体感できたでしょうか? 実は、こんな知識が外国人との会話を盛り上げるネタになるのです。007では、Martiniの話はもちろん、歴代のJamas Bondで誰が一番か、Bond Girlで誰が一番キレイか、Bond Carはどれが最強かなど、お互いの関係をぐっと近づけるネタの宝庫です。好奇心を持ってどんどん調べていくと、映画も面白くなりますし、外国人との会話もはずみ関係もぐっと深くなる。そして、結果的に英語も上達するのです。
この夏休み、あらためて「007」シリーズをDVDで鑑賞されてはいかがですか?
Peace out,
Eric

筆者紹介
エリック松永(Eric Matsunaga)
Berklee College of Music、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科(修士)卒業。19世紀の米国二大発明家Graham Bellを起源に持つ米国最大の通信会社AT&Tにて、先進的なネットワークコンサルティングの領域を開拓。その後アクセンチュアにて、通信分野を柱に、エンターテインメントと通信を活用した新事業のコンサルティングをグローバルレベルで展開する。現在、通信業界を対象にした経営コンサルタントとして活躍中。