非公開企業のカスペルスキーは金融危機でもR&D投資が可能:COOが業績語る

渡邉利和

2008-12-12 18:06

 モスクワで開催されたKaspersky International Press Tourで、Kaspersky LabのCOOであるEugene Buyakin氏にインタビューする機会があった。ここでは、Buyakin氏が12月4日のBusiness Dayで行なった講演の内容を踏まえ、より詳細に踏み込んだ話を聞いてみた。

--現在の世界経済の状況が業績見込みに与える影響は?

Kaspersky LabでCOOを務めるEugene Buyakin氏 Kaspersky LabでCOOを務めるEugene Buyakin氏

 もちろん、現在の世界金融危機はIT業界にさまざまな影響を与えるだろう。大企業でも、IT予算の削減が起こると見られる。

 とはいえ、実際には「ITセキュリティ」はITコスト全体の中で相対的にごくわずかな部分を占めているに過ぎず、ITセキュリティに掛けるコストを大幅に削減したとしても、企業のIT予算全体から見ればたいしたコスト削減にはならない。

 あるいは、ITセキュリティ予算が大幅に削減すると仮定した場合に何が起こるか考えてみると、世界経済危機は一方でサイバークライムの増加を引き起こしているため、企業のリスクは増大することになる。Kaspersky Labとしても、世界金融危機がITセキュリティ業界に影響を与えると見てはいるが、こうした分析から従来の業績予想を修正するほどの影響はないと考えている。

 そもそもKaspersky Labの成長率は、IT業界全体の成長率と一致してはいない。われわれは業界全体の成長率を大きく上回る成長を続けている。業界全体としてはある程度の規模で成長鈍化が起こるかもしれないし、ITセキュリティ業界の成長率も鈍ることになる可能性は高い。しかし、Kaspersky Labの成長は競合企業からシェアを奪うことで達成されているのであり、業界全体の成長に牽引されているわけではない。世界経済は確かに危機的な状況にあるが、Kaspersky Labにとってはまだまだ成長機会に恵まれていると感じている。

 競合に関していえば、Kaspersky Labの競合となる主要ITセキュリティベンダーは、いずれも株式公開企業(Public Company)だ。そのため、彼らの経営は株式市場からの強い圧力を受けており、現在はコスト削減や経営の合理化を強く求められている。技術開発投資に関しても、コスト削減の対象から除外する、というわけにはいかないだろう。その結果、長期的な競争力は低下する可能性が高い。現在もマルウェアは変化と進化を続けており、より洗練された攻撃手法を実現しつつある。それに対抗するためには、より広範な分野で研究開発投資を継続する必要があるのだ。

 一方、Kaspersky Labは現在はまだ非公開企業(Private Company)であり、株式市場からのコスト削減圧力を受けることはないため、景気後退局面であっても研究開発投資を継続することが可能だ。そのため、われわれはより進んだ技術を開発し、競合に対する技術的なアドバンテージをさらに拡大することになるだろう。

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